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07 多様体 · 第 1 章

曲線と曲面の微分幾何

目安 17〜22 時間定理など 16演習 8 問

この章の目標

  • 平面曲線の曲率と回転数、空間曲線の曲率と捩率を計算でき、フレネ–セレの公式を証明できる
  • 曲面の第一基本形式を使って、曲線の長さと面積を計算できる
  • 第二基本形式から主曲率・ガウス曲率・平均曲率を計算し、球面・円柱・トーラス・双曲放物面で検算できる
  • ガウスの驚異の定理とガウス–ボネの定理について、主張と意味を説明できる

前提:微分積分学 第7章、第10章、線形代数 第7章(対称行列の対角化)

本章では R2\mathbb{R}^2, R3\mathbb{R}^3 の標準内積を u⋅vu \cdot v、ノルムを ∣u∣\lvert u \rvert、R3\mathbb{R}^3 の外積(ベクトル積)を u×vu \times v と書く。「滑らか」は C∞C^\infty 級を意味する。

1.1 平面曲線

曲線がどれだけ曲がっているかを数で表したい。ただし同じ図形でも、たどる速さを変えればパラメータ表示は変わる。速さは図形そのものの性質ではないので、まず速さを 1 にそろえる。

定義 1.1(正則曲線, regular curve/弧長, arc length)区間 II 上の滑らかな写像 γ ⁣:I→Rn\gamma\colon I \to \mathbb{R}^n で、すべての t∈It \in I で γ′(t)≠0\gamma'(t) \neq 0 となるものを正則曲線という。t0∈It_0 \in I を固定して

s(t)=∫t0t∣γ′(u)∣ dus(t) = \int_{t_0}^{t} \lvert \gamma'(u) \rvert \, du

を t0t_0 から測った弧長という。∣γ′(s)∣=1\lvert \gamma'(s) \rvert = 1 を満たす正則曲線を単位速度曲線 (unit-speed curve) という。

s′(t)=∣γ′(t)∣>0s'(t) = \lvert \gamma'(t) \rvert > 0 だから ss は狭義単調増加で、滑らかな逆関数 t=t(s)t = t(s) をもつ(逆関数定理)。γ~(s)=γ(t(s))\tilde{\gamma}(s) = \gamma(t(s)) とおくと ∣γ~′(s)∣=∣γ′(t)∣⋅t′(s)=1\lvert \tilde{\gamma}'(s) \rvert = \lvert \gamma'(t) \rvert \cdot t'(s) = 1 となる。したがって正則曲線は、いつでも弧長で表示し直せる。ただし楕円のように弧長が初等関数で書けない場合も多いので、一般のパラメータで使える公式も用意する。

平面上の単位速度曲線 γ\gamma に対し、T(s)=γ′(s)T(s) = \gamma'(s) を単位接ベクトルとし、TT を反時計回りに 90∘90^\circ 回したものを N(s)=JT(s)N(s) = J T(s) とおく。ここで J(a,b)=(−b,a)J(a, b) = (-b, a) である。T⋅T=1T \cdot T = 1 を微分すると 2T′⋅T=02 T' \cdot T = 0 となるので、T′T' は NN の実数倍である。

定義 1.2(平面曲線の曲率, curvature)単位速度の平面曲線 γ\gamma に対し、T′(s)=κ(s)N(s)T'(s) = \kappa(s) N(s) で定まる滑らかな関数 κ\kappa を γ\gamma の(符号付き)曲率という。

κ>0\kappa > 0 は進行方向の左に曲がること、κ<0\kappa < 0 は右に曲がることを意味する。

命題 1.3 正則な平面曲線 γ(t)=(x(t),y(t))\gamma(t) = (x(t), y(t)) の曲率は、パラメータ tt が弧長でなくても

κ=x′y′′−x′′y′(x′2+y′2)3/2\kappa = \frac{x'y'' - x''y'}{(x'^2 + y'^2)^{3/2}}

で与えられる。

証明. v=∣γ′∣=ds/dtv = \lvert \gamma' \rvert = ds/dt とおく。γ′=vT\gamma' = vT であり、dT/dt=(dT/ds)(ds/dt)=vκNdT/dt = (dT/ds)(ds/dt) = v\kappa N だから γ′′=v′T+v2κN\gamma'' = v'T + v^2 \kappa N である。T=(a,b)T = (a, b) とすると det⁡(T,N)=a2+b2=1\det(T, N) = a^2 + b^2 = 1 なので、

x′y′′−x′′y′=det⁡(γ′,γ′′)=det⁡(vT, v′T+v2κN)=v3κdet⁡(T,N)=v3κx'y'' - x''y' = \det(\gamma', \gamma'') = \det(vT,\ v'T + v^2\kappa N) = v^3 \kappa \det(T, N) = v^3 \kappa

となる。v3=(x′2+y′2)3/2v^3 = (x'^2 + y'^2)^{3/2} で割ればよい。□\square

例 1.4 (1) 半径 rr の円 γ(t)=(rcos⁡t,rsin⁡t)\gamma(t) = (r\cos t, r\sin t) では x′y′′−x′′y′=r2sin⁡2t+r2cos⁡2t=r2x'y'' - x''y' = r^2\sin^2 t + r^2\cos^2 t = r^2、分母は r3r^3 なので κ=1/r\kappa = 1/r である。時計回り γ(t)=(rcos⁡t,−rsin⁡t)\gamma(t) = (r\cos t, -r\sin t) なら κ=−1/r\kappa = -1/r となる。

(2) グラフ y=f(x)y = f(x) を γ(x)=(x,f(x))\gamma(x) = (x, f(x)) と表すと κ=f′′/(1+f′2)3/2\kappa = f''/(1 + f'^2)^{3/2} である。放物線 y=x2y = x^2 では κ(x)=2/(1+4x2)3/2\kappa(x) = 2/(1 + 4x^2)^{3/2}、原点で κ=2\kappa = 2 となる。実際、原点で接する半径 1/21/2 の円 x2+(y−1/2)2=1/4x^2 + (y - 1/2)^2 = 1/4 の下半分は y=1/2−1/4−x2=x2+O(x4)y = 1/2 - \sqrt{1/4 - x^2} = x^2 + O(x^4) であり、放物線と 2 次の項まで一致する。

(3) 楕円 γ(t)=(acos⁡t,bsin⁡t)\gamma(t) = (a\cos t, b\sin t)(a,b>0a, b > 0)では x′y′′−x′′y′=absin⁡2t+abcos⁡2t=abx'y'' - x''y' = ab\sin^2 t + ab\cos^2 t = ab だから

κ(t)=ab(a2sin⁡2t+b2cos⁡2t)3/2\kappa(t) = \frac{ab}{(a^2\sin^2 t + b^2\cos^2 t)^{3/2}}

である。a=2a = 2, b=1b = 1 なら、長軸の端 (2,0)(2, 0) で κ=2/1=2\kappa = 2/1 = 2、短軸の端 (0,1)(0, 1) で κ=2/8=1/4\kappa = 2/8 = 1/4 となり、とがった端ほど曲率が大きいという直観に合う。

曲率は「接線の向きが回る速さ」である。これを正確に述べる。R2\mathbb{R}^2 を C\mathbb{C} と同一視すると N=iTN = iT である。

命題 1.5(角度関数)単位速度の平面曲線 γ ⁣:[0,L]→R2\gamma\colon [0, L] \to \mathbb{R}^2 に対し、T(s)=(cos⁡θ(s),sin⁡θ(s))T(s) = (\cos\theta(s), \sin\theta(s)) を満たす滑らかな関数 θ\theta が存在し、θ′=κ\theta' = \kappa が成り立つ。θ\theta は 2π2\pi の整数倍の定数の差を除いて一意である。

証明. T(0)=eiθ0T(0) = e^{i\theta_0} となる θ0\theta_0 をとり、θ(s)=θ0+∫0sκ(u) du\theta(s) = \theta_0 + \int_0^s \kappa(u)\ du と定める。T′=κN=iκTT' = \kappa N = i\kappa T だから

dds(Te−iθ)=(T′−iθ′T)e−iθ=(iκT−iκT)e−iθ=0\frac{d}{ds}\left( T e^{-i\theta} \right) = \left( T' - i\theta' T \right) e^{-i\theta} = (i\kappa T - i\kappa T)e^{-i\theta} = 0

となり、Te−iθT e^{-i\theta} は定数 T(0)e−iθ0=1T(0)e^{-i\theta_0} = 1 に等しい。すなわち T=eiθT = e^{i\theta} である。別の θ~\tilde{\theta} も T=eiθ~T = e^{i\tilde{\theta}} を満たせば ei(θ~−θ)=1e^{i(\tilde{\theta} - \theta)} = 1 だから θ~−θ\tilde{\theta} - \theta は 2πZ2\pi\mathbb{Z} に値をとる連続関数であり、定数である。θ′=κ\theta' = \kappa は定義から従う。□\square

定義 1.6(回転数, rotation index)単位速度曲線 γ ⁣:R→R2\gamma\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}^2 が周期 L>0L > 0 をもつ(γ(s+L)=γ(s)\gamma(s + L) = \gamma(s))とき、γ\gamma を閉曲線という。このとき T(L)=T(0)T(L) = T(0) だから θ(L)−θ(0)∈2πZ\theta(L) - \theta(0) \in 2\pi\mathbb{Z} であり、

nγ=θ(L)−θ(0)2π=12π∫0Lκ(s) ds∈Zn_\gamma = \frac{\theta(L) - \theta(0)}{2\pi} = \frac{1}{2\pi}\int_0^L \kappa(s)\,ds \in \mathbb{Z}

を γ\gamma の回転数という。一般のパラメータでは nγn_\gamma は速度ベクトル γ′(t)\gamma'(t) が原点のまわりを回る回数に等しい。

例 1.7 (1) 半径 rr の円を反時計回りに mm 周する曲線の回転数は mm である。

(2) 例 1.4 (3) の楕円では、ds=∣γ′(t)∣dtds = \lvert \gamma'(t) \rvert dt と ∣γ′∣=(a2sin⁡2t+b2cos⁡2t)1/2\lvert \gamma' \rvert = (a^2\sin^2 t + b^2\cos^2 t)^{1/2} より

∫02πκ∣γ′∣ dt=∫02πab dta2sin⁡2t+b2cos⁡2t=2π\int_0^{2\pi} \kappa \lvert \gamma' \rvert\,dt = \int_0^{2\pi} \frac{ab\,dt}{a^2\sin^2 t + b^2\cos^2 t} = 2\pi

となる([0,π/2][0, \pi/2] 上で u=tan⁡tu = \tan t と置換すると ∫0∞ab du/(a2u2+b2)=π/2\int_0^\infty ab\ du/(a^2u^2 + b^2) = \pi/2 で、それを 4 倍する)。よって回転数は 1 である。

(3) 8 の字曲線 γ(t)=(sin⁡t,sin⁡tcos⁡t)\gamma(t) = (\sin t, \sin t\cos t)(0≤t≤2π0 \leq t \leq 2\pi)では γ′(t)=(cos⁡t,cos⁡2t)≠0\gamma'(t) = (\cos t, \cos 2t) \neq 0 である。γ′\gamma' は t=0,π/2,π,3π/2,2πt = 0, \pi/2, \pi, 3\pi/2, 2\pi で順に (1,1),(0,−1),(−1,1),(0,−1),(1,1)(1, 1), (0, -1), (-1, 1), (0, -1), (1, 1) となり、偏角は前半で 270∘270^\circ 減り、後半で 270∘270^\circ 増える。よって回転数は 0 である。

定理 1.8(ホップの回転数定理, Hopf's Umlaufsatz)単純閉曲線(1 周期の中で自己交差しない閉曲線)の回転数は ±1\pm 1 である。

証明は位相的な議論を要するので省略する(参考文献の do Carmo の教科書を参照)。8 の字曲線(例 1.7 (3))は原点で自己交差するので、この定理の反例にはならない。

1.2 空間曲線

空間の曲線は、平面から浮き上がるようにねじれることもできる。曲がり方(曲率)とねじれ方(捩率)の二つの量が必要になる。

定義 1.9(曲率・フレネ標構)γ ⁣:I→R3\gamma\colon I \to \mathbb{R}^3 を単位速度曲線とする。κ(s)=∣γ′′(s)∣\kappa(s) = \lvert \gamma''(s) \rvert を曲率という。以下 κ>0\kappa > 0 を仮定し、

T=γ′,N=T′κ,B=T×NT = \gamma', \quad N = \frac{T'}{\kappa}, \quad B = T \times N

とおく。NN を主法線ベクトル (principal normal)、BB を従法線ベクトル (binormal) といい、(T,N,B)(T, N, B) をフレネ標構 (Frenet frame) という。

T⋅T=1T \cdot T = 1 から T′⋅T=0T' \cdot T = 0 なので N⊥TN \perp T であり、(T,N,B)(T, N, B) は右手系の正規直交基底である。

定理 1.10(フレネ–セレの公式, Frenet–Serret formulas)κ>0\kappa > 0 の単位速度曲線に対し、滑らかな関数 τ\tau が存在して

T′=κN,N′=−κT+τB,B′=−τNT' = \kappa N, \qquad N' = -\kappa T + \tau B, \qquad B' = -\tau N

が成り立つ。τ\tau を捩率 (torsion) という。行列で書けば

dds(TNB)=(TNB)(0−κ0κ0−τ0τ0)\frac{d}{ds}\begin{pmatrix} T & N & B \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} T & N & B \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & -\kappa & 0 \\ \kappa & 0 & -\tau \\ 0 & \tau & 0 \end{pmatrix}

である(係数行列は交代行列)。

証明. 第 1 式は NN の定義そのものである。N′=aT+bN+cBN' = aT + bN + cB と展開する。N⋅N=1N \cdot N = 1 を微分して N′⋅N=0N' \cdot N = 0、すなわち b=0b = 0 である。N⋅T=0N \cdot T = 0 を微分して N′⋅T=−N⋅T′=−κN' \cdot T = -N \cdot T' = -\kappa、すなわち a=−κa = -\kappa である。τ:=c=N′⋅B\tau := c = N' \cdot B とおけば第 2 式を得る。最後に、T×N=BT \times N = B, N×B=TN \times B = T, B×T=NB \times T = N に注意して

B′=T′×N+T×N′=κN×N+T×(−κT+τB)=τ T×B=−τNB' = T' \times N + T \times N' = \kappa N \times N + T \times (-\kappa T + \tau B) = \tau\,T \times B = -\tau N

となる。□\square

命題 1.11 正則曲線 γ(t)\gamma(t)(パラメータは任意)で γ′×γ′′≠0\gamma' \times \gamma'' \neq 0 のとき

κ=∣γ′×γ′′∣∣γ′∣3,τ=det⁡(γ′,γ′′,γ′′′)∣γ′×γ′′∣2\kappa = \frac{\lvert \gamma' \times \gamma'' \rvert}{\lvert \gamma' \rvert^3}, \qquad \tau = \frac{\det(\gamma', \gamma'', \gamma''')}{\lvert \gamma' \times \gamma'' \rvert^2}

が成り立つ。

証明. v=∣γ′∣v = \lvert \gamma' \rvert とする。命題 1.3 の証明と同様に、フレネ–セレの公式を使って tt で微分すると

γ′=vT,γ′′=v′T+v2κN,γ′′′=(v′′−v3κ2)T+(3vv′κ+v2κ′)N+v3κτB\begin{aligned} \gamma' &= vT, \qquad \gamma'' = v'T + v^2\kappa N, \\ \gamma''' &= (v'' - v^3\kappa^2)T + (3vv'\kappa + v^2\kappa')N + v^3\kappa\tau B \end{aligned}

となる。よって γ′×γ′′=v3κB\gamma' \times \gamma'' = v^3\kappa B であり ∣γ′×γ′′∣=v3κ\lvert \gamma' \times \gamma'' \rvert = v^3\kappa である。さらに det⁡(γ′,γ′′,γ′′′)=(γ′×γ′′)⋅γ′′′=v3κ⋅v3κτ\det(\gamma', \gamma'', \gamma''') = (\gamma' \times \gamma'') \cdot \gamma''' = v^3\kappa \cdot v^3\kappa\tau となるから、τ\tau の式も従う。□\square

例 1.12(常螺旋)a>0a > 0, b∈Rb \in \mathbb{R} とし、γ(t)=(acos⁡t,asin⁡t,bt)\gamma(t) = (a\cos t, a\sin t, bt) とする。c=a2+b2c = \sqrt{a^2 + b^2} とおくと ∣γ′∣=c\lvert \gamma' \rvert = c で、s=cts = ct が弧長である。

  • フレネ標構で計算する:T=(−asin⁡t,acos⁡t,b)/cT = (-a\sin t, a\cos t, b)/c、dT/ds=(1/c) dT/dt=(a/c2)(−cos⁡t,−sin⁡t,0)dT/ds = (1/c)\ dT/dt = (a/c^2)(-\cos t, -\sin t, 0) より κ=a/c2\kappa = a/c^2, N=(−cos⁡t,−sin⁡t,0)N = (-\cos t, -\sin t, 0) である。B=T×N=(bsin⁡t,−bcos⁡t,a)/cB = T \times N = (b\sin t, -b\cos t, a)/c であり、dB/ds=(b/c2)(cos⁡t,sin⁡t,0)=−(b/c2)NdB/ds = (b/c^2)(\cos t, \sin t, 0) = -(b/c^2)N だから τ=b/c2\tau = b/c^2 である。
  • 命題 1.11 で検算する:γ′′=(−acos⁡t,−asin⁡t,0)\gamma'' = (-a\cos t, -a\sin t, 0), γ′′′=(asin⁡t,−acos⁡t,0)\gamma''' = (a\sin t, -a\cos t, 0), γ′×γ′′=(absin⁡t,−abcos⁡t,a2)\gamma' \times \gamma'' = (ab\sin t, -ab\cos t, a^2) より ∣γ′×γ′′∣=ac\lvert \gamma' \times \gamma'' \rvert = ac、κ=ac/c3=a/c2\kappa = ac/c^3 = a/c^2 である。また det⁡(γ′,γ′′,γ′′′)=a2bsin⁡2t+a2bcos⁡2t=a2b\det(\gamma', \gamma'', \gamma''') = a^2b\sin^2 t + a^2b\cos^2 t = a^2b より τ=a2b/(a2c2)=b/c2\tau = a^2b/(a^2c^2) = b/c^2 である。

二つの計算は一致し、κ=a/(a2+b2)\kappa = a/(a^2 + b^2), τ=b/(a2+b2)\tau = b/(a^2 + b^2) はともに定数である。b>0b > 0(右ねじ)なら τ>0\tau > 0、b=0b = 0(円)なら τ=0\tau = 0 である。

命題 1.13 κ>0\kappa > 0 の空間曲線について、τ≡0\tau \equiv 0 であることと、曲線がある平面に含まれることは同値である。

証明. τ≡0\tau \equiv 0 なら B′=0B' = 0 で BB は定ベクトル B0B_0 である。(γ⋅B0)′=T⋅B0=0(\gamma \cdot B_0)' = T \cdot B_0 = 0 だから γ⋅B0\gamma \cdot B_0 は定数で、γ\gamma は B0B_0 を法線とする平面に含まれる。逆に γ⋅e\gamma \cdot e が一定となる単位ベクトル ee があれば、T⋅e=0T \cdot e = 0 と T′⋅e=0T' \cdot e = 0 から N⋅e=0N \cdot e = 0 となる。よって B=±eB = \pm e であり、BB は連続なので符号は一定である。したがって B′=0B' = 0 となり、τ=0\tau = 0 が従う。□\square

定理 1.14(曲線論の基本定理)区間 II 上の滑らかな関数 κ>0\kappa > 0 と τ\tau が与えられると、曲率 κ\kappa、捩率 τ\tau をもつ単位速度曲線 γ ⁣:I→R3\gamma\colon I \to \mathbb{R}^3 が存在する。そのような曲線は、向きを保つ合同変換 x↦Ax+bx \mapsto Ax + b(A∈SO⁡(3)A \in \operatorname{SO}(3))の違いを除いて一意である。

1.3 曲面のパラメータ表示と第一基本形式

定義 1.15(正則曲面片, 正則曲面)D⊂R2D \subset \mathbb{R}^2 を開集合とする。滑らかな写像 σ ⁣:D→R3\sigma\colon D \to \mathbb{R}^3 で、各点で σu×σv≠0\sigma_u \times \sigma_v \neq 0(σu=∂σ/∂u\sigma_u = \partial\sigma/\partial u などと σv\sigma_v が一次独立)となるものを正則曲面片 (regular surface patch) という。σu,σv\sigma_u, \sigma_v が張る平面を接平面、ν=σu×σv/∣σu×σv∣\nu = \sigma_u \times \sigma_v / \lvert \sigma_u \times \sigma_v \rvert を単位法ベクトルという。部分集合 S⊂R3S \subset \mathbb{R}^3 の各点 pp に対し、pp の開近傍 V⊂R3V \subset \mathbb{R}^3 と、V∩SV \cap S への同相写像となる正則曲面片が存在するとき、SS を正則曲面 (regular surface) という。

例 1.16 (1) 半径 rr の球面:σ(u,v)=r(sin⁡ucos⁡v,sin⁡usin⁡v,cos⁡u)\sigma(u, v) = r(\sin u\cos v, \sin u\sin v, \cos u), (u,v)∈(0,π)×(0,2π)(u, v) \in (0, \pi) \times (0, 2\pi)。uu は北極から測った角(余緯度)、vv は経度である。この一枚は経線の半分を覆わないが、回転させたもう一枚と合わせれば球面全体を覆う。

(2) 半径 rr の円柱:σ(u,v)=(rcos⁡u,rsin⁡u,v)\sigma(u, v) = (r\cos u, r\sin u, v)。

(3) トーラス:0<r<R0 < r < R とし、σ(u,v)=((R+rcos⁡u)cos⁡v,(R+rcos⁡u)sin⁡v,rsin⁡u)\sigma(u, v) = ((R + r\cos u)\cos v, (R + r\cos u)\sin v, r\sin u)。xzxz 平面上で中心 (R,0)(R, 0)、半径 rr の円を zz 軸のまわりに回転させた曲面である。

(4) 関数のグラフ:σ(u,v)=(u,v,f(u,v))\sigma(u, v) = (u, v, f(u, v))。σu×σv=(−fu,−fv,1)≠0\sigma_u \times \sigma_v = (-f_u, -f_v, 1) \neq 0 なので常に正則である。

曲面上の曲線の長さを測るには、接ベクトルの長さがわかればよい。

定義 1.17(第一基本形式, first fundamental form)接ベクトル w=aσu+bσvw = a\sigma_u + b\sigma_v に対し

I(w,w)=w⋅w=Ea2+2Fab+Gb2,E=σu⋅σu,F=σu⋅σv,G=σv⋅σv\mathrm{I}(w, w) = w \cdot w = Ea^2 + 2Fab + Gb^2, \qquad E = \sigma_u \cdot \sigma_u,\quad F = \sigma_u \cdot \sigma_v,\quad G = \sigma_v \cdot \sigma_v

を第一基本形式といい、I=E du2+2F du dv+G dv2\mathrm{I} = E\ du^2 + 2F\ du\ dv + G\ dv^2 と書く。

命題 1.18 曲面上の曲線 α(t)=σ(u(t),v(t))\alpha(t) = \sigma(u(t), v(t))(a≤t≤ba \leq t \leq b)の長さは ∫abEu′2+2Fu′v′+Gv′2 dt\int_a^b \sqrt{Eu'^2 + 2Fu'v' + Gv'^2}\ dt である。σ\sigma が単射となる有界領域 Ω⊂D\Omega \subset D について、σ(Ω)\sigma(\Omega) の面積は

∬ΩEG−F2 du dv\iint_\Omega \sqrt{EG - F^2}\,du\,dv

である。

証明. α′=u′σu+v′σv\alpha' = u'\sigma_u + v'\sigma_v だから前半は定義から従う。後半は、面積の定義 ∬Ω∣σu×σv∣ du dv\iint_\Omega \lvert \sigma_u \times \sigma_v \rvert\ du\ dv(微分積分学 第10章)と、ラグランジュの恒等式 ∣a×b∣2=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2\lvert a \times b \rvert^2 = \lvert a \rvert^2\lvert b \rvert^2 - (a \cdot b)^2 から従う。□\square

例 1.19 例 1.16 について計算する。

  • 球面:σu=r(cos⁡ucos⁡v,cos⁡usin⁡v,−sin⁡u)\sigma_u = r(\cos u\cos v, \cos u\sin v, -\sin u), σv=r(−sin⁡usin⁡v,sin⁡ucos⁡v,0)\sigma_v = r(-\sin u\sin v, \sin u\cos v, 0) より E=r2E = r^2, F=0F = 0, G=r2sin⁡2uG = r^2\sin^2 u。面積は ∫02π∫0πr2sin⁡u du dv=4πr2\int_0^{2\pi}\int_0^\pi r^2\sin u\ du\ dv = 4\pi r^2(覆い残した経線は面積 0)。
  • 円柱:E=r2E = r^2, F=0F = 0, G=1G = 1。u~=ru\tilde{u} = ru と取り替えれば I=du~2+dv2\mathrm{I} = d\tilde{u}^2 + dv^2 となり、平面の直交座標と同じ形になる。紙を丸めて円柱を作れることの表現である。
  • トーラス:σu=(−rsin⁡ucos⁡v,−rsin⁡usin⁡v,rcos⁡u)\sigma_u = (-r\sin u\cos v, -r\sin u\sin v, r\cos u), σv=(−(R+rcos⁡u)sin⁡v,(R+rcos⁡u)cos⁡v,0)\sigma_v = (-(R + r\cos u)\sin v, (R + r\cos u)\cos v, 0) より E=r2E = r^2, F=0F = 0, G=(R+rcos⁡u)2G = (R + r\cos u)^2。面積は ∫02π∫02πr(R+rcos⁡u) du dv=4π2Rr\int_0^{2\pi}\int_0^{2\pi} r(R + r\cos u)\ du\ dv = 4\pi^2 Rr。

パラメータを (u,v)=Φ(u~,v~)(u, v) = \Phi(\tilde{u}, \tilde{v}) と取り替えると、連鎖律 σu~=σu ∂u/∂u~+σv ∂v/∂u~\sigma_{\tilde{u}} = \sigma_u\ \partial u/\partial\tilde{u} + \sigma_v\ \partial v/\partial\tilde{u} などから、係数行列は J=DΦJ = D\Phi を用いて次のように変わる。

(E~F~F~G~)=J⊤(EFFG)J\begin{pmatrix} \tilde{E} & \tilde{F} \\ \tilde{F} & \tilde{G} \end{pmatrix} = J^{\top}\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix} J

第一基本形式だけで決まる量(長さ・角・面積など)を、曲面の内在的 (intrinsic) な量という。

1.4 第二基本形式と曲率

第一基本形式は、平面と円柱の区別すらつけられない(例 1.19)。曲面が空間の中でどう曲がっているかは、法ベクトルの変化で測る。

定義 1.20(第二基本形式, second fundamental form)

L=σuu⋅ν,M=σuv⋅ν,N=σvv⋅νL = \sigma_{uu} \cdot \nu, \qquad M = \sigma_{uv} \cdot \nu, \qquad N = \sigma_{vv} \cdot \nu

とおき、II=L du2+2M du dv+N dv2\mathrm{II} = L\ du^2 + 2M\ du\ dv + N\ dv^2 を第二基本形式という。

σu⋅ν=0\sigma_u \cdot \nu = 0 を uu, vv で微分すると L=−σu⋅νuL = -\sigma_u \cdot \nu_u, M=−σu⋅νvM = -\sigma_u \cdot \nu_v が得られる。同様に σv⋅ν=0\sigma_v \cdot \nu = 0 から M=−σv⋅νuM = -\sigma_v \cdot \nu_u, N=−σv⋅νvN = -\sigma_v \cdot \nu_v となる。

命題 1.21(法曲率)曲面上の単位速度曲線 α(s)=σ(u(s),v(s))\alpha(s) = \sigma(u(s), v(s)) が s=0s = 0 で接ベクトル w=aσu+bσvw = a\sigma_u + b\sigma_v をもつとき、

α′′(0)⋅ν=La2+2Mab+Nb2=II(w,w)\alpha''(0) \cdot \nu = La^2 + 2Mab + Nb^2 = \mathrm{II}(w, w)

である。すなわち、加速度の法線成分は接ベクトル ww だけで決まる。これを ww 方向の法曲率 (normal curvature) kn(w)k_n(w) という。

証明. α′=u′σu+v′σv\alpha' = u'\sigma_u + v'\sigma_v をもう一度微分すると α′′=u′2σuu+2u′v′σuv+v′2σvv+u′′σu+v′′σv\alpha'' = u'^2\sigma_{uu} + 2u'v'\sigma_{uv} + v'^2\sigma_{vv} + u''\sigma_u + v''\sigma_v となる。ν\nu との内積をとればよい。□\square

ν⋅ν=1\nu \cdot \nu = 1 より νu,νv\nu_u, \nu_v は ν\nu に直交し、接平面 TpT_p に属する。

定義 1.22(形作用素, shape operator)線形写像 Sp ⁣:Tp→TpS_p\colon T_p \to T_p を Sp(aσu+bσv)=−(aνu+bνv)S_p(a\sigma_u + b\sigma_v) = -(a\nu_u + b\nu_v) で定める。これは単位法ベクトルを与える写像(ガウス写像)ν\nu の微分に −1-1 を掛けたものであり、ν\nu の向きを固定すればパラメータ表示によらない(向きを逆にするパラメータの取り替えでは ν\nu が −ν-\nu に替わり、SpS_p の符号が変わる)。

上の式から Sp(w)⋅w′=II(w,w′)S_p(w) \cdot w' = \mathrm{II}(w, w')(II\mathrm{II} を対称双線形形式とみる)であり、SpS_p は内積について対称、すなわち Sp(w)⋅w′=w⋅Sp(w′)S_p(w) \cdot w' = w \cdot S_p(w') である。

命題 1.23 基底 (σu,σv)(\sigma_u, \sigma_v) に関する SpS_p の表現行列は

(EFFG)−1(LMMN)\begin{pmatrix} E & F \\ F & G \end{pmatrix}^{-1}\begin{pmatrix} L & M \\ M & N \end{pmatrix}

である。

証明. Sp(σu)=a11σu+a21σvS_p(\sigma_u) = a_{11}\sigma_u + a_{21}\sigma_v とおき、σu\sigma_u, σv\sigma_v との内積をとると a11E+a21F=La_{11}E + a_{21}F = L, a11F+a21G=Ma_{11}F + a_{21}G = M となる。Sp(σv)=a12σu+a22σvS_p(\sigma_v) = a_{12}\sigma_u + a_{22}\sigma_v からも同様に a12E+a22F=Ma_{12}E + a_{22}F = M, a12F+a22G=Na_{12}F + a_{22}G = N が得られる。まとめると IA=II\mathrm{I}A = \mathrm{II}(係数行列の等式)である。□\square

定義 1.24(主曲率・ガウス曲率・平均曲率)SpS_p は対称だから、実固有値 k1,k2k_1, k_2 と、それぞれに対する正規直交な固有ベクトル e1,e2e_1, e_2 をもつ(線形代数 第7章)。k1,k2k_1, k_2 を主曲率 (principal curvatures)、e1,e2e_1, e_2 の方向を主方向という。さらに

K=k1k2=det⁡Sp=LN−M2EG−F2,H=k1+k22=EN−2FM+GL2(EG−F2)K = k_1k_2 = \det S_p = \frac{LN - M^2}{EG - F^2}, \qquad H = \frac{k_1 + k_2}{2} = \frac{EN - 2FM + GL}{2(EG - F^2)}

をそれぞれガウス曲率 (Gaussian curvature)、平均曲率 (mean curvature) という。

HH の式は、I−1\mathrm{I}^{-1} が I\mathrm{I} の余因子行列を EG−F2EG - F^2 で割ったものであることを使って I−1II\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II} の跡を計算すれば得られる。ν\nu を −ν-\nu に替えると L,M,N,ki,HL, M, N, k_i, H の符号は変わるが、KK は変わらない。K>0K > 0 の点を楕円点、K<0K < 0 の点を双曲点、K=0K = 0 かつ Sp≠0S_p \neq 0 の点を放物点、Sp=0S_p = 0 の点を平坦点という。

定理 1.25(オイラーの公式)単位接ベクトル w=cos⁡θ e1+sin⁡θ e2w = \cos\theta\ e_1 + \sin\theta\ e_2 に対し kn(w)=k1cos⁡2θ+k2sin⁡2θk_n(w) = k_1\cos^2\theta + k_2\sin^2\theta である。特に k1,k2k_1, k_2 は法曲率の最大値と最小値である。

証明. kn(w)=Sp(w)⋅w=(k1cos⁡θ e1+k2sin⁡θ e2)⋅(cos⁡θ e1+sin⁡θ e2)=k1cos⁡2θ+k2sin⁡2θk_n(w) = S_p(w) \cdot w = (k_1\cos\theta\ e_1 + k_2\sin\theta\ e_2) \cdot (\cos\theta\ e_1 + \sin\theta\ e_2) = k_1\cos^2\theta + k_2\sin^2\theta である。□\square

例 1.26(球面)例 1.16 (1) で σu×σv=r2sin⁡u (sin⁡ucos⁡v,sin⁡usin⁡v,cos⁡u)\sigma_u \times \sigma_v = r^2\sin u\ (\sin u\cos v, \sin u\sin v, \cos u) だから ν=σ/r\nu = \sigma/r(外向き)である。σuu=−σ\sigma_{uu} = -\sigma より L=−rL = -r、σuv=r(−cos⁡usin⁡v,cos⁡ucos⁡v,0)\sigma_{uv} = r(-\cos u\sin v, \cos u\cos v, 0) より M=0M = 0、σvv=−rsin⁡u(cos⁡v,sin⁡v,0)\sigma_{vv} = -r\sin u(\cos v, \sin v, 0) より N=−rsin⁡2uN = -r\sin^2 u である。よって

K=(−r)(−rsin⁡2u)r4sin⁡2u=1r2,H=r2(−rsin⁡2u)+r2sin⁡2u (−r)2r4sin⁡2u=−1rK = \frac{(-r)(-r\sin^2 u)}{r^4\sin^2 u} = \frac{1}{r^2}, \qquad H = \frac{r^2(-r\sin^2 u) + r^2\sin^2 u\,(-r)}{2r^4\sin^2 u} = -\frac{1}{r}

である。検算:ν=σ/r\nu = \sigma/r だから Sp(w)=−w/rS_p(w) = -w/r であり、k1=k2=−1/rk_1 = k_2 = -1/r となって一致する。すべての点が臍点(k1=k2k_1 = k_2)である。

例 1.27(円柱)例 1.16 (2) では ν=(cos⁡u,sin⁡u,0)\nu = (\cos u, \sin u, 0), L=σuu⋅ν=−rL = \sigma_{uu} \cdot \nu = -r, M=N=0M = N = 0 なので、k1=L/E=−1/rk_1 = L/E = -1/r, k2=0k_2 = 0 であり、K=0K = 0, H=−1/(2r)H = -1/(2r) である。

例 1.28(トーラス)例 1.16 (3) で ρ=R+rcos⁡u\rho = R + r\cos u とおく。σu×σv=−rρ (cos⁡ucos⁡v,cos⁡usin⁡v,sin⁡u)\sigma_u \times \sigma_v = -r\rho\ (\cos u\cos v, \cos u\sin v, \sin u) より ν=−(cos⁡ucos⁡v,cos⁡usin⁡v,sin⁡u)\nu = -(\cos u\cos v, \cos u\sin v, \sin u)(回転の中心円へ向かう向き)である。

σuu=−r(cos⁡ucos⁡v,cos⁡usin⁡v,sin⁡u),σuv=(rsin⁡usin⁡v,−rsin⁡ucos⁡v,0),σvv=−ρ(cos⁡v,sin⁡v,0)\sigma_{uu} = -r(\cos u\cos v, \cos u\sin v, \sin u), \quad \sigma_{uv} = (r\sin u\sin v, -r\sin u\cos v, 0), \quad \sigma_{vv} = -\rho(\cos v, \sin v, 0)

から L=rL = r, M=0M = 0, N=ρcos⁡uN = \rho\cos u となる。F=M=0F = M = 0 だから k1=L/E=1/rk_1 = L/E = 1/r, k2=N/G=cos⁡u/ρk_2 = N/G = \cos u/\rho であり、

K=cos⁡ur(R+rcos⁡u),H=R+2rcos⁡u2r(R+rcos⁡u)K = \frac{\cos u}{r(R + r\cos u)}, \qquad H = \frac{R + 2r\cos u}{2r(R + r\cos u)}

である。外側の半分(cos⁡u>0\cos u > 0)は楕円点、内側の半分(cos⁡u<0\cos u < 0)は双曲点、上下の円 u=±π/2u = \pm\pi/2 は放物点である。

例 1.29(グラフと双曲放物面)σ(u,v)=(u,v,f(u,v))\sigma(u, v) = (u, v, f(u, v)) に対し W=1+fu2+fv2W = \sqrt{1 + f_u^2 + f_v^2} とおくと、E=1+fu2E = 1 + f_u^2, F=fufvF = f_uf_v, G=1+fv2G = 1 + f_v^2, EG−F2=W2EG - F^2 = W^2, ν=(−fu,−fv,1)/W\nu = (-f_u, -f_v, 1)/W, L=fuu/WL = f_{uu}/W, M=fuv/WM = f_{uv}/W, N=fvv/WN = f_{vv}/W となる。したがって

K=fuufvv−fuv2(1+fu2+fv2)2K = \frac{f_{uu}f_{vv} - f_{uv}^2}{(1 + f_u^2 + f_v^2)^2}

である。双曲放物面 z=xyz = xy(f=uvf = uv)では K=−1/(1+u2+v2)2<0K = -1/(1 + u^2 + v^2)^2 < 0、H=−uv/(1+u2+v2)3/2H = -uv/(1 + u^2 + v^2)^{3/2} である。原点では I\mathrm{I} は単位行列、L=N=0L = N = 0, M=1M = 1 なので、主曲率は ±1\pm 1、主方向は (1,±1)/2(1, \pm 1)/\sqrt{2} である。実際、直線 y=xy = x の上では z=x2z = x^2(上に曲がる)、y=−xy = -x の上では z=−x2z = -x^2(下に曲がる)であり、検算になっている。

命題 1.30(ガウス曲率の符号と曲面の形)正則曲面の点 pp で K(p)>0K(p) > 0 ならば、pp の近くで曲面は接平面の片側にある。K(p)<0K(p) < 0 ならば、pp のどんな近傍にも接平面の両側の点がある。

証明. KK は合同変換で変わらないので、p=0p = 0、接平面が xyxy 平面、ν(p)=(0,0,1)\nu(p) = (0, 0, 1) としてよい。陰関数定理により、曲面は pp の近くでグラフ z=f(x,y)z = f(x, y) と表され、f(0)=0f(0) = 0, ∇f(0)=0\nabla f(0) = 0 である。例 1.29 より、原点では II\mathrm{II} が ff のヘッセ行列 Hess⁡f(0)\operatorname{Hess} f(0) に一致し、K(p)=det⁡Hess⁡f(0)K(p) = \det\operatorname{Hess} f(0) となる。テイラーの定理 f(x,y)=12(x,y)Hess⁡f(0)(x,y)⊤+o(x2+y2)f(x, y) = \frac{1}{2}(x, y)\operatorname{Hess} f(0)(x, y)^{\top} + o(x^2 + y^2) より、ヘッセ行列が定値(K>0K > 0)なら ff は原点の近くで(原点以外で)一定の符号をもち、不定値(K<0K < 0)なら正負両方の値をとる(微分積分学 第7章 の極値判定と同じ議論)。□\square

K(p)=0K(p) = 0 のときは何も言えない(演習問題 1.6)。

1.5 ガウスの驚異の定理

KK は法ベクトル ν\nu、すなわち外側の空間を使って定義した。ところがガウスは、KK が第一基本形式だけで決まることを発見した。

二つの正則曲面片 σ,σ~ ⁣:D→R3\sigma, \tilde{\sigma}\colon D \to \mathbb{R}^3 の E,F,GE, F, G が一致するとき、対応 σ(u,v)↦σ~(u,v)\sigma(u, v) \mapsto \tilde{\sigma}(u, v) は曲線の長さを保つ。このとき二つの曲面は局所等長 (locally isometric) であるという。

定理 1.31(ガウスの驚異の定理, Theorema Egregium)ガウス曲率は E,F,GE, F, G とその 2 階までの偏導関数で表される。具体的には(ブリオスキの公式)

K=1(EG−F2)2(det⁡(−12Evv+Fuv−12Guu12EuFu−12EvFv−12GuEF12GvFG)−det⁡(012Ev12Gu12EvEF12GuFG))K = \frac{1}{(EG - F^2)^2}\left( \det\begin{pmatrix} -\frac{1}{2}E_{vv} + F_{uv} - \frac{1}{2}G_{uu} & \frac{1}{2}E_u & F_u - \frac{1}{2}E_v \\ F_v - \frac{1}{2}G_u & E & F \\ \frac{1}{2}G_v & F & G \end{pmatrix} - \det\begin{pmatrix} 0 & \frac{1}{2}E_v & \frac{1}{2}G_u \\ \frac{1}{2}E_v & E & F \\ \frac{1}{2}G_u & F & G \end{pmatrix} \right)

である。特に、局所等長な曲面は対応する点で等しいガウス曲率をもつ。

証明(計算の要点). W=EG−F2=∣σu×σv∣W = \sqrt{EG - F^2} = \lvert \sigma_u \times \sigma_v \rvert とする。L=det⁡(σuu,σu,σv)/WL = \det(\sigma_{uu}, \sigma_u, \sigma_v)/W などであり、det⁡Adet⁡B=det⁡(A⊤B)\det A \det B = \det(A^{\top}B) を使うと

W4K=W2(LN−M2)=det⁡((σuuσuσv)⊤(σvvσuσv))−det⁡((σuvσuσv)⊤(σuvσuσv))W^4 K = W^2(LN - M^2) = \det\left( \begin{pmatrix} \sigma_{uu} & \sigma_u & \sigma_v \end{pmatrix}^{\top}\begin{pmatrix} \sigma_{vv} & \sigma_u & \sigma_v \end{pmatrix} \right) - \det\left( \begin{pmatrix} \sigma_{uv} & \sigma_u & \sigma_v \end{pmatrix}^{\top}\begin{pmatrix} \sigma_{uv} & \sigma_u & \sigma_v \end{pmatrix} \right)

となる。右辺の行列の成分は、(1,1)(1,1) 成分以外はすべて E,F,GE, F, G の 1 階導関数で書ける。実際、E=σu⋅σuE = \sigma_u \cdot \sigma_u などを微分すると

σuu⋅σu=12Eu,σuv⋅σu=12Ev,σuv⋅σv=12Gu,σvv⋅σv=12Gv,σuu⋅σv=Fu−12Ev,σvv⋅σu=Fv−12Gu\begin{aligned} &\sigma_{uu} \cdot \sigma_u = \tfrac{1}{2}E_u, \quad \sigma_{uv} \cdot \sigma_u = \tfrac{1}{2}E_v, \quad \sigma_{uv} \cdot \sigma_v = \tfrac{1}{2}G_u, \quad \sigma_{vv} \cdot \sigma_v = \tfrac{1}{2}G_v, \\ &\sigma_{uu} \cdot \sigma_v = F_u - \tfrac{1}{2}E_v, \quad \sigma_{vv} \cdot \sigma_u = F_v - \tfrac{1}{2}G_u \end{aligned}

となる。二つの行列式は (1,1)(1,1) 成分について線形で、その余因子はどちらも EG−F2EG - F^2 である。したがって差をとると、(1,1)(1,1) 成分は σuu⋅σvv−σuv⋅σuv\sigma_{uu} \cdot \sigma_{vv} - \sigma_{uv} \cdot \sigma_{uv} だけにまとめられる。これは σvvu=σuvv\sigma_{vvu} = \sigma_{uvv} を使うと

σuu⋅σvv−σuv⋅σuv=(σu⋅σvv)u−(σu⋅σuv)v=Fuv−12Guu−12Evv\sigma_{uu} \cdot \sigma_{vv} - \sigma_{uv} \cdot \sigma_{uv} = (\sigma_u \cdot \sigma_{vv})_u - (\sigma_u \cdot \sigma_{uv})_v = F_{uv} - \tfrac{1}{2}G_{uu} - \tfrac{1}{2}E_{vv}

となり、これも E,F,GE, F, G で書ける。以上を代入すれば公式が得られる。□\square

系 1.32 F=0F = 0(直交パラメータ)のとき

K=−12EG((EvEG)v+(GuEG)u)K = -\frac{1}{2\sqrt{EG}}\left( \left( \frac{E_v}{\sqrt{EG}} \right)_v + \left( \frac{G_u}{\sqrt{EG}} \right)_u \right)

である。

証明. ブリオスキの公式に F=0F = 0 を代入して行列式を展開すると、分子は −12EG(Evv+Guu)+14(GEuGu+EEvGv+GEv2+EGu2)-\frac{1}{2}EG(E_{vv} + G_{uu}) + \frac{1}{4}(GE_uG_u + EE_vG_v + GE_v^2 + EG_u^2) となる。一方、右辺を微分して展開すると −(Evv+Guu)/(2EG)+(EvG Ev+EvE Gv+GuG Eu+GuE Gu)/(4E2G2)-(E_{vv} + G_{uu})/(2EG) + (E_vG\ E_v + E_vE\ G_v + G_uG\ E_u + G_uE\ G_u)/(4E^2G^2) となり、両者は一致する。□\square

例 1.33(検算)球面(E=r2E = r^2, G=r2sin⁡2uG = r^2\sin^2 u)では EG=r2sin⁡u\sqrt{EG} = r^2\sin u, Ev=0E_v = 0, Gu/EG=2cos⁡uG_u/\sqrt{EG} = 2\cos u だから K=−(−2sin⁡u)/(2r2sin⁡u)=1/r2K = -(-2\sin u)/(2r^2\sin u) = 1/r^2 となる。トーラス(E=r2E = r^2, G=ρ2G = \rho^2)では EG=rρ\sqrt{EG} = r\rho, Gu/EG=−2ρrsin⁡u/(rρ)=−2sin⁡uG_u/\sqrt{EG} = -2\rho r\sin u/(r\rho) = -2\sin u だから K=−(−2cos⁡u)/(2rρ)=cos⁡u/(rρ)K = -(-2\cos u)/(2r\rho) = \cos u/(r\rho) となる。どちらも ν\nu を使った例 1.26, 1.28 の結果と一致する。

注意 1.34(驚異の定理の意味) (1) 平面と円柱はどちらも K=0K = 0 で、実際に局所等長である(例 1.19)。一方、平均曲率は 00 と −1/(2r)-1/(2r) で異なる。HH は内在的な量ではない。 (2) 球面の開集合(K=1/r2K = 1/r^2)と平面の開集合(K=0K = 0)は局所等長でない。距離を正確に保つ世界地図は作れない。 (3) 曲面の内在的な幾何は、R3\mathbb{R}^3 を忘れて DD 上の「計量」E du2+2F du dv+G dv2E\ du^2 + 2F\ du\ dv + G\ dv^2 だけから展開できる。例えば上半平面の計量 (du2+dv2)/v2(du^2 + dv^2)/v^2 は K≡−1K \equiv -1 をもつ(演習問題 1.8)。この計量は R3\mathbb{R}^3 の曲面の第一基本形式として定義したものではないが、それでも幾何学として意味をもつ(局所的には擬球面(演習問題 1.5)が同じ計量をもつが、上半平面全体をこの計量ごと R3\mathbb{R}^3 の正則曲面として実現することはできない:ヒルベルトの定理)。外側の空間なしに図形そのものを考えるというこの発想が、第2章 の抽象的な多様体、さらに リーマン幾何学 へつながる。

1.6 ガウス–ボネの定理

向き付けられた曲面(単位法ベクトル ν\nu が連続に選ばれている曲面)上の単位速度曲線 α\alpha を考える。α′′⊥α′\alpha'' \perp \alpha' だから、α′′\alpha'' は ν\nu と ν×α′\nu \times \alpha' の一次結合として

α′′=kn ν+kg (ν×α′)\alpha'' = k_n\,\nu + k_g\,(\nu \times \alpha')

と書ける。kgk_g を測地的曲率 (geodesic curvature) といい、kg≡0k_g \equiv 0 となる曲線を測地線 (geodesic) という。kgk_g は、曲面の内側から見たときの曲線の曲がり方である。例えば単位球面の大円 α(s)=cos⁡s e1+sin⁡s e2\alpha(s) = \cos s\ e_1 + \sin s\ e_2 では α′′=−α=−ν\alpha'' = -\alpha = -\nu なので kg=0k_g = 0 であり、大円は測地線である。

例 1.35(緯線)単位球面の余緯度 u0∈(0,π)u_0 \in (0, \pi) の緯線を、ρ=sin⁡u0\rho = \sin u_0 として α(s)=(ρcos⁡(s/ρ),ρsin⁡(s/ρ),cos⁡u0)\alpha(s) = (\rho\cos(s/\rho), \rho\sin(s/\rho), \cos u_0) とパラメータ表示する(単位速度)。ν=α\nu = \alpha(外向き)とすると α′=(−sin⁡(s/ρ),cos⁡(s/ρ),0)\alpha' = (-\sin(s/\rho), \cos(s/\rho), 0)、α′′=−ρ−1(cos⁡(s/ρ),sin⁡(s/ρ),0)\alpha'' = -\rho^{-1}(\cos(s/\rho), \sin(s/\rho), 0)、ν×α′=(−cos⁡u0cos⁡(s/ρ),−cos⁡u0sin⁡(s/ρ),ρ)\nu \times \alpha' = (-\cos u_0\cos(s/\rho), -\cos u_0\sin(s/\rho), \rho) である。よって kg=cos⁡u0/ρ=cot⁡u0k_g = \cos u_0/\rho = \cot u_0 である。ν×α′\nu \times \alpha' は北極側を向くので、α\alpha は北極を含む帽子領域の境界として正の向き(領域を左に見る向き)にまわる。

定理 1.36(局所版ガウス–ボネの定理)向き付けられた正則曲面の一つの直交パラメータ表示の像の中に、閉円板と同相な領域 RR があり、その境界は区分的に正則な単純閉曲線 α\alpha で、正の向きにまわるとする。α\alpha の角点での外角を θ1,…,θm∈(−π,π)\theta_1, \dots, \theta_m \in (-\pi, \pi) とすると

∫αkg ds+∬RK dA+∑j=1mθj=2π\int_\alpha k_g\,ds + \iint_R K\,dA + \sum_{j=1}^m \theta_j = 2\pi

が成り立つ。ここで dA=EG−F2 du dvdA = \sqrt{EG - F^2}\ du\ dv は面積要素である。

証明の方針. φ(s)\varphi(s) を σu\sigma_u から α′(s)\alpha'(s) までの角とすると、リウヴィルの公式 kg=φ′+(Guv′−Evu′)/(2EG)k_g = \varphi' + (G_uv' - E_vu')/(2\sqrt{EG}) が成り立つ(直交パラメータのもとでの直接計算)。これを積分し、第 2 項にグリーンの定理と系 1.32 を適用すると

∮αGu dv−Ev du2EG=∬((Gu2EG)u+(Ev2EG)v)du dv=−∬RKEG du dv\oint_\alpha \frac{G_u\,dv - E_v\,du}{2\sqrt{EG}} = \iint \left( \left( \frac{G_u}{2\sqrt{EG}} \right)_u + \left( \frac{E_v}{2\sqrt{EG}} \right)_v \right) du\,dv = -\iint_R K\sqrt{EG}\,du\,dv

となる。さらに、単純閉曲線の接線の回転は、ホップの回転数定理(定理 1.8)の角点つき版により ∮φ′ ds+∑θj=2π\oint \varphi'\ ds + \sum\theta_j = 2\pi となる。以上を合わせればよい。□\square

例 1.37(検算)(1) 単位球面の北極のまわりの帽子領域 {u≤u0}\lbrace u \leq u_0 \rbrace では、例 1.35 より ∫kg ds=cot⁡u0⋅2πsin⁡u0=2πcos⁡u0\int k_g\ ds = \cot u_0 \cdot 2\pi\sin u_0 = 2\pi\cos u_0 である。また ∬K dA\iint K\ dA は帽子の面積 2π(1−cos⁡u0)2\pi(1 - \cos u_0) に等しく、和はちょうど 2π2\pi になる。

(2) 単位球面を座標平面で 8 等分した球面三角形は、3 辺が大円(kg=0k_g = 0)で内角がすべて π/2\pi/2 である。面積は 4π/8=π/24\pi/8 = \pi/2、外角の和は 3π/23\pi/2 で、和はやはり 2π2\pi になる。一般に、球面三角形の内角の和は π+(面積)\pi + (\text{面積}) である。

大域版を述べるために、コンパクトな曲面を曲線三角形に分割(三角形分割 (triangulation))する。頂点数を n0n_0、辺数を n1n_1、面数を n2n_2 とする。

定義 1.38(オイラー標数, Euler characteristic)χ(S)=n0−n1+n2\chi(S) = n_0 - n_1 + n_2 とおく。コンパクトな正則曲面は三角形分割をもち、χ(S)\chi(S) は分割のとり方によらないことが知られている(主張のみ)。

四面体を膨らませると球面の分割が得られるので χ(S2)=4−6+4=2\chi(S^2) = 4 - 6 + 4 = 2 である。トーラスは、正方形を 3×33 \times 3 に区切って各小正方形を対角線で 2 つに分け、対辺を貼り合わせれば分割できる。このとき n0=9n_0 = 9, n1=27n_1 = 27, n2=18n_2 = 18 なので χ(T2)=0\chi(T^2) = 0 である。向き付け可能で連結なコンパクト曲面は、種数 gg(穴の数)によって分類され、χ=2−2g\chi = 2 - 2g である(曲面の分類定理:主張のみ)。

定理 1.39(大域版ガウス–ボネの定理)S⊂R3S \subset \mathbb{R}^3 を向き付け可能なコンパクト正則曲面とすると

∬SK dA=2πχ(S)\iint_S K\,dA = 2\pi\chi(S)

が成り立つ。

証明の方針. 各三角形が一つの直交パラメータ表示の像に収まるように、細かい三角形分割をとる。三角形 TjT_j の内角を βj1,βj2,βj3\beta_{j1}, \beta_{j2}, \beta_{j3} とすると、外角は π−βji\pi - \beta_{ji} である。局所版を適用して jj について和をとる。各辺は隣り合う二つの三角形の境界として逆向きに 2 回通るので、kgk_g の積分は打ち消し合う。したがって

∬SK dA+3πn2−∑j,iβji=2πn2\iint_S K\,dA + 3\pi n_2 - \sum_{j,i}\beta_{ji} = 2\pi n_2

となる。各頂点のまわりの内角の和は 2π2\pi だから ∑βji=2πn0\sum\beta_{ji} = 2\pi n_0 である。また各面は 3 辺をもち、各辺は 2 面に属するので 3n2=2n13n_2 = 2n_1 である。代入すると ∬SK dA=2πn0−πn2=2πn0−2πn1+2πn2=2πχ(S)\iint_S K\ dA = 2\pi n_0 - \pi n_2 = 2\pi n_0 - 2\pi n_1 + 2\pi n_2 = 2\pi\chi(S) を得る。□\square

例 1.40(検算)球面では ∬K dA=(1/r2)⋅4πr2=4π=2π⋅2\iint K\ dA = (1/r^2) \cdot 4\pi r^2 = 4\pi = 2\pi \cdot 2 である。トーラスでは、例 1.28 と dA=rρ du dvdA = r\rho\ du\ dv より ∬K dA=∫02π∫02πcos⁡u du dv=0=2π⋅0\iint K\ dA = \int_0^{2\pi}\int_0^{2\pi}\cos u\ du\ dv = 0 = 2\pi \cdot 0 である。

注意 1.41 KK そのものは曲面を変形すると変わるが、その積分は位相だけで決まる。局所的な量の積分が大域的な不変量になるという現象は、第6章のストークスの定理と第7章のド・ラーム・コホモロジーの主題でもある。高次元への一般化(チャーン–ガウス–ボネの定理)は リーマン幾何学 第6章 で扱う。

まとめ

  • 正則曲線は弧長で表示し直せる。平面曲線の曲率は接線の角度の変化率 θ′=κ\theta' = \kappa であり、閉曲線の全曲率は 2π2\pi × 回転数である。単純閉曲線の回転数は ±1\pm 1 である(ホップ)。
  • 空間曲線はフレネ標構 (T,N,B)(T, N, B) をもち、フレネ–セレの公式の係数行列は交代行列である。曲率と捩率は合同変換を除いて曲線を決定する。
  • 曲面の第一基本形式 E,F,GE, F, G は長さと面積を与え、第二基本形式 L,M,NL, M, N は法曲率を与える。形作用素の行列は I−1II\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II} である。
  • K=(LN−M2)/(EG−F2)K = (LN - M^2)/(EG - F^2), H=(EN−2FM+GL)/(2(EG−F2))H = (EN - 2FM + GL)/(2(EG - F^2))。球面 K=1/r2K = 1/r^2、円柱 K=0K = 0、トーラス K=cos⁡u/(r(R+rcos⁡u))K = \cos u/(r(R + r\cos u))、z=xyz = xy では K=−1/(1+x2+y2)2K = -1/(1 + x^2 + y^2)^2 である。
  • ガウスの驚異の定理:KK は第一基本形式だけで決まる。HH は決まらない。
  • ガウス–ボネの定理:∬SK dA=2πχ(S)\iint_S K\ dA = 2\pi\chi(S)。局所的な曲率の積分が位相不変量になる。

演習問題

問題 1.1 ★ 懸垂線 y=cosh⁡xy = \cosh x の曲率を求めよ。

解答

例 1.4 (2) の公式で f′=sinh⁡xf' = \sinh x, f′′=cosh⁡xf'' = \cosh x だから、κ=cosh⁡x/(1+sinh⁡2x)3/2=cosh⁡x/cosh⁡3x=1/cosh⁡2x\kappa = \cosh x/(1 + \sinh^2 x)^{3/2} = \cosh x/\cosh^3 x = 1/\cosh^2 x である。

問題 1.2 ★ 空間曲線 γ(t)=(t,t2,t3)\gamma(t) = (t, t^2, t^3) の曲率と捩率を求め、t=0t = 0 での値を答えよ。

解答

γ′=(1,2t,3t2)\gamma' = (1, 2t, 3t^2), γ′′=(0,2,6t)\gamma'' = (0, 2, 6t), γ′′′=(0,0,6)\gamma''' = (0, 0, 6) より γ′×γ′′=(6t2,−6t,2)\gamma' \times \gamma'' = (6t^2, -6t, 2)、∣γ′×γ′′∣2=4(9t4+9t2+1)\lvert \gamma' \times \gamma'' \rvert^2 = 4(9t^4 + 9t^2 + 1)、det⁡(γ′,γ′′,γ′′′)=(γ′×γ′′)⋅γ′′′=12\det(\gamma', \gamma'', \gamma''') = (\gamma' \times \gamma'') \cdot \gamma''' = 12 である。命題 1.11 より

κ=29t4+9t2+1(1+4t2+9t4)3/2,τ=39t4+9t2+1\kappa = \frac{2\sqrt{9t^4 + 9t^2 + 1}}{(1 + 4t^2 + 9t^4)^{3/2}}, \qquad \tau = \frac{3}{9t^4 + 9t^2 + 1}

となる。t=0t = 0 では κ=2\kappa = 2, τ=3\tau = 3 である。

問題 1.3 ★★ 極方程式 r=1+2cos⁡tr = 1 + 2\cos t で表される蝸牛線 γ(t)=(1+2cos⁡t)(cos⁡t,sin⁡t)\gamma(t) = (1 + 2\cos t)(\cos t, \sin t)(0≤t≤2π0 \leq t \leq 2\pi)は正則な閉曲線であり、その回転数は 2 であることを示せ。

解答

R2=C\mathbb{R}^2 = \mathbb{C} とみて r(t)=1+2cos⁡tr(t) = 1 + 2\cos t とおくと、γ=reit\gamma = re^{it} より γ′=eit(r′+ir)\gamma' = e^{it}(r' + ir) である。w(t)=r′+ir=−2sin⁡t+i(1+2cos⁡t)=i+2ieitw(t) = r' + ir = -2\sin t + i(1 + 2\cos t) = i + 2ie^{it} は、中心 ii、半径 2 の円を反時計回りに 1 周する。∣0−i∣=1<2\lvert 0 - i \rvert = 1 < 2 だから ww は 0 を通らず(したがって γ\gamma は正則)、0 のまわりを 1 回まわる(is+2ieiti s + 2ie^{it} で ss を 1 から 0 へ動かしても 0 を通らないので、2ieit2ie^{it} の回転数 1 に等しい)。γ′\gamma' の偏角は t+arg⁡w(t)t + \arg w(t) なので、1 周で 2π+2π=4π2\pi + 2\pi = 4\pi 増える。よって回転数は 2 である。この曲線は内側に小さなループをもち、自己交差する。

問題 1.4 ★★ 回転面 σ(u,v)=(f(u)cos⁡v,f(u)sin⁡v,g(u))\sigma(u, v) = (f(u)\cos v, f(u)\sin v, g(u)) を考える。ただし f>0f > 0 で、母線は単位速度(f′2+g′2=1f'^2 + g'^2 = 1)とする。E,F,GE, F, G を求め、K=−f′′/fK = -f''/f を示せ。これを球面とトーラスで検算せよ。

解答

σu=(f′cos⁡v,f′sin⁡v,g′)\sigma_u = (f'\cos v, f'\sin v, g'), σv=(−fsin⁡v,fcos⁡v,0)\sigma_v = (-f\sin v, f\cos v, 0) より E=1E = 1, F=0F = 0, G=f2G = f^2 である。系 1.32 で EG=f\sqrt{EG} = f, Ev=0E_v = 0, Gu/EG=2f′G_u/\sqrt{EG} = 2f' だから K=−(2f′′)/(2f)=−f′′/fK = -(2f'')/(2f) = -f''/f である。

(ν\nu を使った検算)ν=(−g′cos⁡v,−g′sin⁡v,f′)\nu = (-g'\cos v, -g'\sin v, f') であり、L=f′g′′−f′′g′L = f'g'' - f''g', M=0M = 0, N=fg′N = fg' となる。f′f′′+g′g′′=0f'f'' + g'g'' = 0 を使うと (f′g′′−f′′g′)g′=−f′2f′′−f′′g′2=−f′′(f'g'' - f''g')g' = -f'^2f'' - f''g'^2 = -f'' となるので、K=LN/(EG)=−f′′/fK = LN/(EG) = -f''/f で一致する。

単位球面は f=sin⁡uf = \sin u, g=−cos⁡ug = -\cos u であり、K=sin⁡u/sin⁡u=1K = \sin u/\sin u = 1 となる。トーラスは f=R+rcos⁡(u/r)f = R + r\cos(u/r), g=rsin⁡(u/r)g = r\sin(u/r) であり、f′′=−r−1cos⁡(u/r)f'' = -r^{-1}\cos(u/r) から K=cos⁡(u/r)/(r(R+rcos⁡(u/r)))K = \cos(u/r)/(r(R + r\cos(u/r))) となる。これは例 1.28 で uu を u/ru/r に置き換えたもの(単位速度にしたため)に一致する。

問題 1.5 ★★ 問題 1.4 で f(u)=e−uf(u) = e^{-u}, g(u)=∫0u1−e−2t dtg(u) = \int_0^u \sqrt{1 - e^{-2t}}\ dt(u>0u > 0)とすると、K≡−1K \equiv -1 の回転面(擬球面)が得られることを示せ。

解答

u>0u > 0 で f′2+g′2=e−2u+(1−e−2u)=1f'^2 + g'^2 = e^{-2u} + (1 - e^{-2u}) = 1 であり、f>0f > 0 である。f′′=e−u=ff'' = e^{-u} = f だから K=−f′′/f=−1K = -f''/f = -1 となる。u→∞u \to \infty で f→0f \to 0 となり、曲面は回転軸に漸近する。

問題 1.6 ★★ 猿の腰掛け z=x3−3xy2z = x^3 - 3xy^2 のガウス曲率が K=−36(x2+y2)/(1+9(x2+y2)2)2K = -36(x^2 + y^2)/(1 + 9(x^2 + y^2)^2)^2 であることを示せ。原点は平坦点であるが、原点のどんな近傍にも接平面 z=0z = 0 の両側の点があることを確かめよ。

解答

fx=3x2−3y2f_x = 3x^2 - 3y^2, fy=−6xyf_y = -6xy, fxx=6xf_{xx} = 6x, fxy=−6yf_{xy} = -6y, fyy=−6xf_{yy} = -6x である。fx2+fy2=9(x2−y2)2+36x2y2=9(x2+y2)2f_x^2 + f_y^2 = 9(x^2 - y^2)^2 + 36x^2y^2 = 9(x^2 + y^2)^2、fxxfyy−fxy2=−36(x2+y2)f_{xx}f_{yy} - f_{xy}^2 = -36(x^2 + y^2) なので、例 1.29 から主張が従う。原点では 2 階導関数がすべて 0 なので II=0\mathrm{II} = 0 であり、平坦点である。極座標では z=r3cos⁡3θz = r^3\cos 3\theta となり、どんなに小さい円の上でも正負両方の値をとる。一方、z=x4+y4z = x^4 + y^4 も原点で 2 階導関数がすべて 0 なので原点は平坦点(K=0K = 0)であるが、こちらは曲面全体が接平面 z=0z = 0 の片側にある。したがって、K(p)=0K(p) = 0 だけでは局所的な形は決まらない。

問題 1.7 ★★ コンパクトな正則曲面 S⊂R3S \subset \mathbb{R}^3 には K>0K > 0 となる点が存在することを示せ。

解答

∣x∣\lvert x \rvert は SS 上で最大値をとる。その点を pp とし、R0=∣p∣>0R_0 = \lvert p \rvert > 0 とする(SS は 1 点ではない)。pp を通る SS 上の任意の単位速度曲線 α\alpha(α(0)=p\alpha(0) = p)について、h(s)=∣α(s)∣2h(s) = \lvert \alpha(s) \rvert^2 は s=0s = 0 で最大になる。よって h′(0)=2α′(0)⋅p=0h'(0) = 2\alpha'(0) \cdot p = 0 であり、pp は接平面に直交する。そこで ν(p)=p/R0\nu(p) = p/R_0 ととる。さらに h′′(0)=2(1+α′′(0)⋅p)≤0h''(0) = 2(1 + \alpha''(0) \cdot p) \leq 0 なので、法曲率は α′′(0)⋅ν≤−1/R0\alpha''(0) \cdot \nu \leq -1/R_0 である。すべての方向で法曲率が −1/R0-1/R_0 以下なので、主曲率も k1,k2≤−1/R0k_1, k_2 \leq -1/R_0 である。したがって K=k1k2≥1/R02>0K = k_1k_2 \geq 1/R_0^2 > 0 となる。

問題 1.8 ★★ 上半平面 {(u,v)∣v>0}\lbrace (u, v) \mid v > 0 \rbrace 上の計量 E=G=1/v2E = G = 1/v^2, F=0F = 0 のガウス曲率を、系 1.32 の式で計算せよ。

解答

EG=1/v2\sqrt{EG} = 1/v^2, Ev=−2/v3E_v = -2/v^3 より Ev/EG=−2/vE_v/\sqrt{EG} = -2/v であり、(−2/v)v=2/v2(-2/v)_v = 2/v^2 である。Gu=0G_u = 0 なので K=−v22⋅2v2=−1K = -\frac{v^2}{2} \cdot \frac{2}{v^2} = -1 となる。これはポアンカレの上半平面モデル(双曲平面)であり、リーマン面 第6章 でも現れる。

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