この章の目標
- 平面曲線の曲率と回転数、空間曲線の曲率と捩率を計算でき、フレネ–セレの公式を証明できる
- 曲面の第一基本形式を使って、曲線の長さと面積を計算できる
- 第二基本形式から主曲率・ガウス曲率・平均曲率を計算し、球面・円柱・トーラス・双曲放物面で検算できる
- ガウスの驚異の定理とガウス–ボネの定理について、主張と意味を説明できる
前提:微分積分学 第7章、第10章、線形代数 第7章(対称行列の対角化)
本章では R2, R3 の標準内積を u⋅v、ノルムを ∣u∣、R3 の外積(ベクトル積)を u×v と書く。「滑らか」は C∞ 級を意味する。
1.1 平面曲線
曲線がどれだけ曲がっているかを数で表したい。ただし同じ図形でも、たどる速さを変えればパラメータ表示は変わる。速さは図形そのものの性質ではないので、まず速さを 1 にそろえる。
定義 1.1(正則曲線, regular curve/弧長, arc length)区間 I 上の滑らかな写像 γ:I→Rn で、すべての t∈I で γ′(t)=0 となるものを正則曲線という。t0∈I を固定して
s(t)=∫t0t∣γ′(u)∣du
を t0 から測った弧長という。∣γ′(s)∣=1 を満たす正則曲線を単位速度曲線 (unit-speed curve) という。
s′(t)=∣γ′(t)∣>0 だから s は狭義単調増加で、滑らかな逆関数 t=t(s) をもつ(逆関数定理)。γ~(s)=γ(t(s)) とおくと ∣γ~′(s)∣=∣γ′(t)∣⋅t′(s)=1 となる。したがって正則曲線は、いつでも弧長で表示し直せる。ただし楕円のように弧長が初等関数で書けない場合も多いので、一般のパラメータで使える公式も用意する。
平面上の単位速度曲線 γ に対し、T(s)=γ′(s) を単位接ベクトルとし、T を反時計回りに 90∘ 回したものを N(s)=JT(s) とおく。ここで J(a,b)=(−b,a) である。T⋅T=1 を微分すると 2T′⋅T=0 となるので、T′ は N の実数倍である。
定義 1.2(平面曲線の曲率, curvature)単位速度の平面曲線 γ に対し、T′(s)=κ(s)N(s) で定まる滑らかな関数 κ を γ の(符号付き)曲率という。
κ>0 は進行方向の左に曲がること、κ<0 は右に曲がることを意味する。
命題 1.3 正則な平面曲線 γ(t)=(x(t),y(t)) の曲率は、パラメータ t が弧長でなくても
κ=(x′2+y′2)3/2x′y′′−x′′y′
で与えられる。
証明. v=∣γ′∣=ds/dt とおく。γ′=vT であり、dT/dt=(dT/ds)(ds/dt)=vκN だから γ′′=v′T+v2κN である。T=(a,b) とすると det(T,N)=a2+b2=1 なので、
x′y′′−x′′y′=det(γ′,γ′′)=det(vT, v′T+v2κN)=v3κdet(T,N)=v3κ
となる。v3=(x′2+y′2)3/2 で割ればよい。□
例 1.4 (1) 半径 r の円 γ(t)=(rcost,rsint) では x′y′′−x′′y′=r2sin2t+r2cos2t=r2、分母は r3 なので κ=1/r である。時計回り γ(t)=(rcost,−rsint) なら κ=−1/r となる。
(2) グラフ y=f(x) を γ(x)=(x,f(x)) と表すと κ=f′′/(1+f′2)3/2 である。放物線 y=x2 では κ(x)=2/(1+4x2)3/2、原点で κ=2 となる。実際、原点で接する半径 1/2 の円 x2+(y−1/2)2=1/4 の下半分は y=1/2−1/4−x2=x2+O(x4) であり、放物線と 2 次の項まで一致する。
(3) 楕円 γ(t)=(acost,bsint)(a,b>0)では x′y′′−x′′y′=absin2t+abcos2t=ab だから
κ(t)=(a2sin2t+b2cos2t)3/2ab
である。a=2, b=1 なら、長軸の端 (2,0) で κ=2/1=2、短軸の端 (0,1) で κ=2/8=1/4 となり、とがった端ほど曲率が大きいという直観に合う。
曲率は「接線の向きが回る速さ」である。これを正確に述べる。R2 を C と同一視すると N=iT である。
命題 1.5(角度関数)単位速度の平面曲線 γ:[0,L]→R2 に対し、T(s)=(cosθ(s),sinθ(s)) を満たす滑らかな関数 θ が存在し、θ′=κ が成り立つ。θ は 2π の整数倍の定数の差を除いて一意である。
証明. T(0)=eiθ0 となる θ0 をとり、θ(s)=θ0+∫0sκ(u) du と定める。T′=κN=iκT だから
dsd(Te−iθ)=(T′−iθ′T)e−iθ=(iκT−iκT)e−iθ=0
となり、Te−iθ は定数 T(0)e−iθ0=1 に等しい。すなわち T=eiθ である。別の θ~ も T=eiθ~ を満たせば ei(θ~−θ)=1 だから θ~−θ は 2πZ に値をとる連続関数であり、定数である。θ′=κ は定義から従う。□
定義 1.6(回転数, rotation index)単位速度曲線 γ:R→R2 が周期 L>0 をもつ(γ(s+L)=γ(s))とき、γ を閉曲線という。このとき T(L)=T(0) だから θ(L)−θ(0)∈2πZ であり、
nγ=2πθ(L)−θ(0)=2π1∫0Lκ(s)ds∈Z
を γ の回転数という。一般のパラメータでは nγ は速度ベクトル γ′(t) が原点のまわりを回る回数に等しい。
例 1.7 (1) 半径 r の円を反時計回りに m 周する曲線の回転数は m である。
(2) 例 1.4 (3) の楕円では、ds=∣γ′(t)∣dt と ∣γ′∣=(a2sin2t+b2cos2t)1/2 より
∫02πκ∣γ′∣dt=∫02πa2sin2t+b2cos2tabdt=2π
となる([0,π/2] 上で u=tant と置換すると ∫0∞ab du/(a2u2+b2)=π/2 で、それを 4 倍する)。よって回転数は 1 である。
(3) 8 の字曲線 γ(t)=(sint,sintcost)(0≤t≤2π)では γ′(t)=(cost,cos2t)=0 である。γ′ は t=0,π/2,π,3π/2,2π で順に (1,1),(0,−1),(−1,1),(0,−1),(1,1) となり、偏角は前半で 270∘ 減り、後半で 270∘ 増える。よって回転数は 0 である。
定理 1.8(ホップの回転数定理, Hopf's Umlaufsatz)単純閉曲線(1 周期の中で自己交差しない閉曲線)の回転数は ±1 である。
証明は位相的な議論を要するので省略する(参考文献の do Carmo の教科書を参照)。8 の字曲線(例 1.7 (3))は原点で自己交差するので、この定理の反例にはならない。
1.2 空間曲線
空間の曲線は、平面から浮き上がるようにねじれることもできる。曲がり方(曲率)とねじれ方(捩率)の二つの量が必要になる。
定義 1.9(曲率・フレネ標構)γ:I→R3 を単位速度曲線とする。κ(s)=∣γ′′(s)∣ を曲率という。以下 κ>0 を仮定し、
T=γ′,N=κT′,B=T×N
とおく。N を主法線ベクトル (principal normal)、B を従法線ベクトル (binormal) といい、(T,N,B) をフレネ標構 (Frenet frame) という。
T⋅T=1 から T′⋅T=0 なので N⊥T であり、(T,N,B) は右手系の正規直交基底である。
定理 1.10(フレネ–セレの公式, Frenet–Serret formulas)κ>0 の単位速度曲線に対し、滑らかな関数 τ が存在して
T′=κN,N′=−κT+τB,B′=−τN
が成り立つ。τ を捩率 (torsion) という。行列で書けば
dsd(TNB)=(TNB)0κ0−κ0τ0−τ0
である(係数行列は交代行列)。
証明. 第 1 式は N の定義そのものである。N′=aT+bN+cB と展開する。N⋅N=1 を微分して N′⋅N=0、すなわち b=0 である。N⋅T=0 を微分して N′⋅T=−N⋅T′=−κ、すなわち a=−κ である。τ:=c=N′⋅B とおけば第 2 式を得る。最後に、T×N=B, N×B=T, B×T=N に注意して
B′=T′×N+T×N′=κN×N+T×(−κT+τB)=τT×B=−τN
となる。□
命題 1.11 正則曲線 γ(t)(パラメータは任意)で γ′×γ′′=0 のとき
κ=∣γ′∣3∣γ′×γ′′∣,τ=∣γ′×γ′′∣2det(γ′,γ′′,γ′′′)
が成り立つ。
証明. v=∣γ′∣ とする。命題 1.3 の証明と同様に、フレネ–セレの公式を使って t で微分すると
γ′γ′′′=vT,γ′′=v′T+v2κN,=(v′′−v3κ2)T+(3vv′κ+v2κ′)N+v3κτB
となる。よって γ′×γ′′=v3κB であり ∣γ′×γ′′∣=v3κ である。さらに det(γ′,γ′′,γ′′′)=(γ′×γ′′)⋅γ′′′=v3κ⋅v3κτ となるから、τ の式も従う。□
例 1.12(常螺旋)a>0, b∈R とし、γ(t)=(acost,asint,bt) とする。c=a2+b2 とおくと ∣γ′∣=c で、s=ct が弧長である。
- フレネ標構で計算する:T=(−asint,acost,b)/c、dT/ds=(1/c) dT/dt=(a/c2)(−cost,−sint,0) より κ=a/c2, N=(−cost,−sint,0) である。B=T×N=(bsint,−bcost,a)/c であり、dB/ds=(b/c2)(cost,sint,0)=−(b/c2)N だから τ=b/c2 である。
- 命題 1.11 で検算する:γ′′=(−acost,−asint,0), γ′′′=(asint,−acost,0), γ′×γ′′=(absint,−abcost,a2) より ∣γ′×γ′′∣=ac、κ=ac/c3=a/c2 である。また det(γ′,γ′′,γ′′′)=a2bsin2t+a2bcos2t=a2b より τ=a2b/(a2c2)=b/c2 である。
二つの計算は一致し、κ=a/(a2+b2), τ=b/(a2+b2) はともに定数である。b>0(右ねじ)なら τ>0、b=0(円)なら τ=0 である。
命題 1.13 κ>0 の空間曲線について、τ≡0 であることと、曲線がある平面に含まれることは同値である。
証明. τ≡0 なら B′=0 で B は定ベクトル B0 である。(γ⋅B0)′=T⋅B0=0 だから γ⋅B0 は定数で、γ は B0 を法線とする平面に含まれる。逆に γ⋅e が一定となる単位ベクトル e があれば、T⋅e=0 と T′⋅e=0 から N⋅e=0 となる。よって B=±e であり、B は連続なので符号は一定である。したがって B′=0 となり、τ=0 が従う。□
定理 1.14(曲線論の基本定理)区間 I 上の滑らかな関数 κ>0 と τ が与えられると、曲率 κ、捩率 τ をもつ単位速度曲線 γ:I→R3 が存在する。そのような曲線は、向きを保つ合同変換 x↦Ax+b(A∈SO(3))の違いを除いて一意である。
1.3 曲面のパラメータ表示と第一基本形式
定義 1.15(正則曲面片, 正則曲面)D⊂R2 を開集合とする。滑らかな写像 σ:D→R3 で、各点で σu×σv=0(σu=∂σ/∂u などと σv が一次独立)となるものを正則曲面片 (regular surface patch) という。σu,σv が張る平面を接平面、ν=σu×σv/∣σu×σv∣ を単位法ベクトルという。部分集合 S⊂R3 の各点 p に対し、p の開近傍 V⊂R3 と、V∩S への同相写像となる正則曲面片が存在するとき、S を正則曲面 (regular surface) という。
例 1.16 (1) 半径 r の球面:σ(u,v)=r(sinucosv,sinusinv,cosu), (u,v)∈(0,π)×(0,2π)。u は北極から測った角(余緯度)、v は経度である。この一枚は経線の半分を覆わないが、回転させたもう一枚と合わせれば球面全体を覆う。
(2) 半径 r の円柱:σ(u,v)=(rcosu,rsinu,v)。
(3) トーラス:0<r<R とし、σ(u,v)=((R+rcosu)cosv,(R+rcosu)sinv,rsinu)。xz 平面上で中心 (R,0)、半径 r の円を z 軸のまわりに回転させた曲面である。
(4) 関数のグラフ:σ(u,v)=(u,v,f(u,v))。σu×σv=(−fu,−fv,1)=0 なので常に正則である。
曲面上の曲線の長さを測るには、接ベクトルの長さがわかればよい。
定義 1.17(第一基本形式, first fundamental form)接ベクトル w=aσu+bσv に対し
I(w,w)=w⋅w=Ea2+2Fab+Gb2,E=σu⋅σu,F=σu⋅σv,G=σv⋅σv
を第一基本形式といい、I=E du2+2F du dv+G dv2 と書く。
命題 1.18 曲面上の曲線 α(t)=σ(u(t),v(t))(a≤t≤b)の長さは ∫abEu′2+2Fu′v′+Gv′2 dt である。σ が単射となる有界領域 Ω⊂D について、σ(Ω) の面積は
∬ΩEG−F2dudv
である。
証明. α′=u′σu+v′σv だから前半は定義から従う。後半は、面積の定義 ∬Ω∣σu×σv∣ du dv(微分積分学 第10章)と、ラグランジュの恒等式 ∣a×b∣2=∣a∣2∣b∣2−(a⋅b)2 から従う。□
例 1.19 例 1.16 について計算する。
- 球面:σu=r(cosucosv,cosusinv,−sinu), σv=r(−sinusinv,sinucosv,0) より E=r2, F=0, G=r2sin2u。面積は ∫02π∫0πr2sinu du dv=4πr2(覆い残した経線は面積 0)。
- 円柱:E=r2, F=0, G=1。u~=ru と取り替えれば I=du~2+dv2 となり、平面の直交座標と同じ形になる。紙を丸めて円柱を作れることの表現である。
- トーラス:σu=(−rsinucosv,−rsinusinv,rcosu), σv=(−(R+rcosu)sinv,(R+rcosu)cosv,0) より E=r2, F=0, G=(R+rcosu)2。面積は ∫02π∫02πr(R+rcosu) du dv=4π2Rr。
パラメータを (u,v)=Φ(u~,v~) と取り替えると、連鎖律 σu~=σu ∂u/∂u~+σv ∂v/∂u~ などから、係数行列は J=DΦ を用いて次のように変わる。
(E~F~F~G~)=J⊤(EFFG)J
第一基本形式だけで決まる量(長さ・角・面積など)を、曲面の内在的 (intrinsic) な量という。
1.4 第二基本形式と曲率
第一基本形式は、平面と円柱の区別すらつけられない(例 1.19)。曲面が空間の中でどう曲がっているかは、法ベクトルの変化で測る。
定義 1.20(第二基本形式, second fundamental form)
L=σuu⋅ν,M=σuv⋅ν,N=σvv⋅ν
とおき、II=L du2+2M du dv+N dv2 を第二基本形式という。
σu⋅ν=0 を u, v で微分すると L=−σu⋅νu, M=−σu⋅νv が得られる。同様に σv⋅ν=0 から M=−σv⋅νu, N=−σv⋅νv となる。
命題 1.21(法曲率)曲面上の単位速度曲線 α(s)=σ(u(s),v(s)) が s=0 で接ベクトル w=aσu+bσv をもつとき、
α′′(0)⋅ν=La2+2Mab+Nb2=II(w,w)
である。すなわち、加速度の法線成分は接ベクトル w だけで決まる。これを w 方向の法曲率 (normal curvature) kn(w) という。
証明. α′=u′σu+v′σv をもう一度微分すると α′′=u′2σuu+2u′v′σuv+v′2σvv+u′′σu+v′′σv となる。ν との内積をとればよい。□
ν⋅ν=1 より νu,νv は ν に直交し、接平面 Tp に属する。
定義 1.22(形作用素, shape operator)線形写像 Sp:Tp→Tp を Sp(aσu+bσv)=−(aνu+bνv) で定める。これは単位法ベクトルを与える写像(ガウス写像)ν の微分に −1 を掛けたものであり、ν の向きを固定すればパラメータ表示によらない(向きを逆にするパラメータの取り替えでは ν が −ν に替わり、Sp の符号が変わる)。
上の式から Sp(w)⋅w′=II(w,w′)(II を対称双線形形式とみる)であり、Sp は内積について対称、すなわち Sp(w)⋅w′=w⋅Sp(w′) である。
命題 1.23 基底 (σu,σv) に関する Sp の表現行列は
(EFFG)−1(LMMN)
である。
証明. Sp(σu)=a11σu+a21σv とおき、σu, σv との内積をとると a11E+a21F=L, a11F+a21G=M となる。Sp(σv)=a12σu+a22σv からも同様に a12E+a22F=M, a12F+a22G=N が得られる。まとめると IA=II(係数行列の等式)である。□
定義 1.24(主曲率・ガウス曲率・平均曲率)Sp は対称だから、実固有値 k1,k2 と、それぞれに対する正規直交な固有ベクトル e1,e2 をもつ(線形代数 第7章)。k1,k2 を主曲率 (principal curvatures)、e1,e2 の方向を主方向という。さらに
K=k1k2=detSp=EG−F2LN−M2,H=2k1+k2=2(EG−F2)EN−2FM+GL
をそれぞれガウス曲率 (Gaussian curvature)、平均曲率 (mean curvature) という。
H の式は、I−1 が I の余因子行列を EG−F2 で割ったものであることを使って I−1II の跡を計算すれば得られる。ν を −ν に替えると L,M,N,ki,H の符号は変わるが、K は変わらない。K>0 の点を楕円点、K<0 の点を双曲点、K=0 かつ Sp=0 の点を放物点、Sp=0 の点を平坦点という。
定理 1.25(オイラーの公式)単位接ベクトル w=cosθ e1+sinθ e2 に対し kn(w)=k1cos2θ+k2sin2θ である。特に k1,k2 は法曲率の最大値と最小値である。
証明. kn(w)=Sp(w)⋅w=(k1cosθ e1+k2sinθ e2)⋅(cosθ e1+sinθ e2)=k1cos2θ+k2sin2θ である。□
例 1.26(球面)例 1.16 (1) で σu×σv=r2sinu (sinucosv,sinusinv,cosu) だから ν=σ/r(外向き)である。σuu=−σ より L=−r、σuv=r(−cosusinv,cosucosv,0) より M=0、σvv=−rsinu(cosv,sinv,0) より N=−rsin2u である。よって
K=r4sin2u(−r)(−rsin2u)=r21,H=2r4sin2ur2(−rsin2u)+r2sin2u(−r)=−r1
である。検算:ν=σ/r だから Sp(w)=−w/r であり、k1=k2=−1/r となって一致する。すべての点が臍点(k1=k2)である。
例 1.27(円柱)例 1.16 (2) では ν=(cosu,sinu,0), L=σuu⋅ν=−r, M=N=0 なので、k1=L/E=−1/r, k2=0 であり、K=0, H=−1/(2r) である。
例 1.28(トーラス)例 1.16 (3) で ρ=R+rcosu とおく。σu×σv=−rρ (cosucosv,cosusinv,sinu) より ν=−(cosucosv,cosusinv,sinu)(回転の中心円へ向かう向き)である。
σuu=−r(cosucosv,cosusinv,sinu),σuv=(rsinusinv,−rsinucosv,0),σvv=−ρ(cosv,sinv,0)
から L=r, M=0, N=ρcosu となる。F=M=0 だから k1=L/E=1/r, k2=N/G=cosu/ρ であり、
K=r(R+rcosu)cosu,H=2r(R+rcosu)R+2rcosu
である。外側の半分(cosu>0)は楕円点、内側の半分(cosu<0)は双曲点、上下の円 u=±π/2 は放物点である。
例 1.29(グラフと双曲放物面)σ(u,v)=(u,v,f(u,v)) に対し W=1+fu2+fv2 とおくと、E=1+fu2, F=fufv, G=1+fv2, EG−F2=W2, ν=(−fu,−fv,1)/W, L=fuu/W, M=fuv/W, N=fvv/W となる。したがって
K=(1+fu2+fv2)2fuufvv−fuv2
である。双曲放物面 z=xy(f=uv)では K=−1/(1+u2+v2)2<0、H=−uv/(1+u2+v2)3/2 である。原点では I は単位行列、L=N=0, M=1 なので、主曲率は ±1、主方向は (1,±1)/2 である。実際、直線 y=x の上では z=x2(上に曲がる)、y=−x の上では z=−x2(下に曲がる)であり、検算になっている。
命題 1.30(ガウス曲率の符号と曲面の形)正則曲面の点 p で K(p)>0 ならば、p の近くで曲面は接平面の片側にある。K(p)<0 ならば、p のどんな近傍にも接平面の両側の点がある。
証明. K は合同変換で変わらないので、p=0、接平面が xy 平面、ν(p)=(0,0,1) としてよい。陰関数定理により、曲面は p の近くでグラフ z=f(x,y) と表され、f(0)=0, ∇f(0)=0 である。例 1.29 より、原点では II が f のヘッセ行列 Hessf(0) に一致し、K(p)=detHessf(0) となる。テイラーの定理 f(x,y)=21(x,y)Hessf(0)(x,y)⊤+o(x2+y2) より、ヘッセ行列が定値(K>0)なら f は原点の近くで(原点以外で)一定の符号をもち、不定値(K<0)なら正負両方の値をとる(微分積分学 第7章 の極値判定と同じ議論)。□
K(p)=0 のときは何も言えない(演習問題 1.6)。
1.5 ガウスの驚異の定理
K は法ベクトル ν、すなわち外側の空間を使って定義した。ところがガウスは、K が第一基本形式だけで決まることを発見した。
二つの正則曲面片 σ,σ~:D→R3 の E,F,G が一致するとき、対応 σ(u,v)↦σ~(u,v) は曲線の長さを保つ。このとき二つの曲面は局所等長 (locally isometric) であるという。
定理 1.31(ガウスの驚異の定理, Theorema Egregium)ガウス曲率は E,F,G とその 2 階までの偏導関数で表される。具体的には(ブリオスキの公式)
K=(EG−F2)21det−21Evv+Fuv−21GuuFv−21Gu21Gv21EuEFFu−21EvFG−det021Ev21Gu21EvEF21GuFG
である。特に、局所等長な曲面は対応する点で等しいガウス曲率をもつ。
証明(計算の要点). W=EG−F2=∣σu×σv∣ とする。L=det(σuu,σu,σv)/W などであり、detAdetB=det(A⊤B) を使うと
W4K=W2(LN−M2)=det((σuuσuσv)⊤(σvvσuσv))−det((σuvσuσv)⊤(σuvσuσv))
となる。右辺の行列の成分は、(1,1) 成分以外はすべて E,F,G の 1 階導関数で書ける。実際、E=σu⋅σu などを微分すると
σuu⋅σu=21Eu,σuv⋅σu=21Ev,σuv⋅σv=21Gu,σvv⋅σv=21Gv,σuu⋅σv=Fu−21Ev,σvv⋅σu=Fv−21Gu
となる。二つの行列式は (1,1) 成分について線形で、その余因子はどちらも EG−F2 である。したがって差をとると、(1,1) 成分は σuu⋅σvv−σuv⋅σuv だけにまとめられる。これは σvvu=σuvv を使うと
σuu⋅σvv−σuv⋅σuv=(σu⋅σvv)u−(σu⋅σuv)v=Fuv−21Guu−21Evv
となり、これも E,F,G で書ける。以上を代入すれば公式が得られる。□
系 1.32 F=0(直交パラメータ)のとき
K=−2EG1((EGEv)v+(EGGu)u)
である。
証明. ブリオスキの公式に F=0 を代入して行列式を展開すると、分子は −21EG(Evv+Guu)+41(GEuGu+EEvGv+GEv2+EGu2) となる。一方、右辺を微分して展開すると −(Evv+Guu)/(2EG)+(EvG Ev+EvE Gv+GuG Eu+GuE Gu)/(4E2G2) となり、両者は一致する。□
例 1.33(検算)球面(E=r2, G=r2sin2u)では EG=r2sinu, Ev=0, Gu/EG=2cosu だから K=−(−2sinu)/(2r2sinu)=1/r2 となる。トーラス(E=r2, G=ρ2)では EG=rρ, Gu/EG=−2ρrsinu/(rρ)=−2sinu だから K=−(−2cosu)/(2rρ)=cosu/(rρ) となる。どちらも ν を使った例 1.26, 1.28 の結果と一致する。
1.6 ガウス–ボネの定理
向き付けられた曲面(単位法ベクトル ν が連続に選ばれている曲面)上の単位速度曲線 α を考える。α′′⊥α′ だから、α′′ は ν と ν×α′ の一次結合として
α′′=knν+kg(ν×α′)
と書ける。kg を測地的曲率 (geodesic curvature) といい、kg≡0 となる曲線を測地線 (geodesic) という。kg は、曲面の内側から見たときの曲線の曲がり方である。例えば単位球面の大円 α(s)=coss e1+sins e2 では α′′=−α=−ν なので kg=0 であり、大円は測地線である。
例 1.35(緯線)単位球面の余緯度 u0∈(0,π) の緯線を、ρ=sinu0 として α(s)=(ρcos(s/ρ),ρsin(s/ρ),cosu0) とパラメータ表示する(単位速度)。ν=α(外向き)とすると α′=(−sin(s/ρ),cos(s/ρ),0)、α′′=−ρ−1(cos(s/ρ),sin(s/ρ),0)、ν×α′=(−cosu0cos(s/ρ),−cosu0sin(s/ρ),ρ) である。よって kg=cosu0/ρ=cotu0 である。ν×α′ は北極側を向くので、α は北極を含む帽子領域の境界として正の向き(領域を左に見る向き)にまわる。
定理 1.36(局所版ガウス–ボネの定理)向き付けられた正則曲面の一つの直交パラメータ表示の像の中に、閉円板と同相な領域 R があり、その境界は区分的に正則な単純閉曲線 α で、正の向きにまわるとする。α の角点での外角を θ1,…,θm∈(−π,π) とすると
∫αkgds+∬RKdA+j=1∑mθj=2π
が成り立つ。ここで dA=EG−F2 du dv は面積要素である。
証明の方針. φ(s) を σu から α′(s) までの角とすると、リウヴィルの公式 kg=φ′+(Guv′−Evu′)/(2EG) が成り立つ(直交パラメータのもとでの直接計算)。これを積分し、第 2 項にグリーンの定理と系 1.32 を適用すると
∮α2EGGudv−Evdu=∬((2EGGu)u+(2EGEv)v)dudv=−∬RKEGdudv
となる。さらに、単純閉曲線の接線の回転は、ホップの回転数定理(定理 1.8)の角点つき版により ∮φ′ ds+∑θj=2π となる。以上を合わせればよい。□
例 1.37(検算)(1) 単位球面の北極のまわりの帽子領域 {u≤u0} では、例 1.35 より ∫kg ds=cotu0⋅2πsinu0=2πcosu0 である。また ∬K dA は帽子の面積 2π(1−cosu0) に等しく、和はちょうど 2π になる。
(2) 単位球面を座標平面で 8 等分した球面三角形は、3 辺が大円(kg=0)で内角がすべて π/2 である。面積は 4π/8=π/2、外角の和は 3π/2 で、和はやはり 2π になる。一般に、球面三角形の内角の和は π+(面積) である。
大域版を述べるために、コンパクトな曲面を曲線三角形に分割(三角形分割 (triangulation))する。頂点数を n0、辺数を n1、面数を n2 とする。
定義 1.38(オイラー標数, Euler characteristic)χ(S)=n0−n1+n2 とおく。コンパクトな正則曲面は三角形分割をもち、χ(S) は分割のとり方によらないことが知られている(主張のみ)。
四面体を膨らませると球面の分割が得られるので χ(S2)=4−6+4=2 である。トーラスは、正方形を 3×3 に区切って各小正方形を対角線で 2 つに分け、対辺を貼り合わせれば分割できる。このとき n0=9, n1=27, n2=18 なので χ(T2)=0 である。向き付け可能で連結なコンパクト曲面は、種数 g(穴の数)によって分類され、χ=2−2g である(曲面の分類定理:主張のみ)。
定理 1.39(大域版ガウス–ボネの定理)S⊂R3 を向き付け可能なコンパクト正則曲面とすると
∬SKdA=2πχ(S)
が成り立つ。
証明の方針. 各三角形が一つの直交パラメータ表示の像に収まるように、細かい三角形分割をとる。三角形 Tj の内角を βj1,βj2,βj3 とすると、外角は π−βji である。局所版を適用して j について和をとる。各辺は隣り合う二つの三角形の境界として逆向きに 2 回通るので、kg の積分は打ち消し合う。したがって
∬SKdA+3πn2−j,i∑βji=2πn2
となる。各頂点のまわりの内角の和は 2π だから ∑βji=2πn0 である。また各面は 3 辺をもち、各辺は 2 面に属するので 3n2=2n1 である。代入すると ∬SK dA=2πn0−πn2=2πn0−2πn1+2πn2=2πχ(S) を得る。□
例 1.40(検算)球面では ∬K dA=(1/r2)⋅4πr2=4π=2π⋅2 である。トーラスでは、例 1.28 と dA=rρ du dv より ∬K dA=∫02π∫02πcosu du dv=0=2π⋅0 である。
まとめ
- 正則曲線は弧長で表示し直せる。平面曲線の曲率は接線の角度の変化率 θ′=κ であり、閉曲線の全曲率は 2π × 回転数である。単純閉曲線の回転数は ±1 である(ホップ)。
- 空間曲線はフレネ標構 (T,N,B) をもち、フレネ–セレの公式の係数行列は交代行列である。曲率と捩率は合同変換を除いて曲線を決定する。
- 曲面の第一基本形式 E,F,G は長さと面積を与え、第二基本形式 L,M,N は法曲率を与える。形作用素の行列は I−1II である。
- K=(LN−M2)/(EG−F2), H=(EN−2FM+GL)/(2(EG−F2))。球面 K=1/r2、円柱 K=0、トーラス K=cosu/(r(R+rcosu))、z=xy では K=−1/(1+x2+y2)2 である。
- ガウスの驚異の定理:K は第一基本形式だけで決まる。H は決まらない。
- ガウス–ボネの定理:∬SK dA=2πχ(S)。局所的な曲率の積分が位相不変量になる。
演習問題
問題 1.1 ★ 懸垂線 y=coshx の曲率を求めよ。
解答
例 1.4 (2) の公式で f′=sinhx, f′′=coshx だから、κ=coshx/(1+sinh2x)3/2=coshx/cosh3x=1/cosh2x である。
問題 1.2 ★ 空間曲線 γ(t)=(t,t2,t3) の曲率と捩率を求め、t=0 での値を答えよ。
解答
γ′=(1,2t,3t2), γ′′=(0,2,6t), γ′′′=(0,0,6) より γ′×γ′′=(6t2,−6t,2)、∣γ′×γ′′∣2=4(9t4+9t2+1)、det(γ′,γ′′,γ′′′)=(γ′×γ′′)⋅γ′′′=12 である。命題 1.11 より
κ=(1+4t2+9t4)3/229t4+9t2+1,τ=9t4+9t2+13
となる。t=0 では κ=2, τ=3 である。
問題 1.3 ★★ 極方程式 r=1+2cost で表される蝸牛線 γ(t)=(1+2cost)(cost,sint)(0≤t≤2π)は正則な閉曲線であり、その回転数は 2 であることを示せ。
解答
R2=C とみて r(t)=1+2cost とおくと、γ=reit より γ′=eit(r′+ir) である。w(t)=r′+ir=−2sint+i(1+2cost)=i+2ieit は、中心 i、半径 2 の円を反時計回りに 1 周する。∣0−i∣=1<2 だから w は 0 を通らず(したがって γ は正則)、0 のまわりを 1 回まわる(is+2ieit で s を 1 から 0 へ動かしても 0 を通らないので、2ieit の回転数 1 に等しい)。γ′ の偏角は t+argw(t) なので、1 周で 2π+2π=4π 増える。よって回転数は 2 である。この曲線は内側に小さなループをもち、自己交差する。
問題 1.4 ★★ 回転面 σ(u,v)=(f(u)cosv,f(u)sinv,g(u)) を考える。ただし f>0 で、母線は単位速度(f′2+g′2=1)とする。E,F,G を求め、K=−f′′/f を示せ。これを球面とトーラスで検算せよ。
解答
σu=(f′cosv,f′sinv,g′), σv=(−fsinv,fcosv,0) より E=1, F=0, G=f2 である。系 1.32 で EG=f, Ev=0, Gu/EG=2f′ だから K=−(2f′′)/(2f)=−f′′/f である。
(ν を使った検算)ν=(−g′cosv,−g′sinv,f′) であり、L=f′g′′−f′′g′, M=0, N=fg′ となる。f′f′′+g′g′′=0 を使うと (f′g′′−f′′g′)g′=−f′2f′′−f′′g′2=−f′′ となるので、K=LN/(EG)=−f′′/f で一致する。
単位球面は f=sinu, g=−cosu であり、K=sinu/sinu=1 となる。トーラスは f=R+rcos(u/r), g=rsin(u/r) であり、f′′=−r−1cos(u/r) から K=cos(u/r)/(r(R+rcos(u/r))) となる。これは例 1.28 で u を u/r に置き換えたもの(単位速度にしたため)に一致する。
問題 1.5 ★★ 問題 1.4 で f(u)=e−u, g(u)=∫0u1−e−2t dt(u>0)とすると、K≡−1 の回転面(擬球面)が得られることを示せ。
解答
u>0 で f′2+g′2=e−2u+(1−e−2u)=1 であり、f>0 である。f′′=e−u=f だから K=−f′′/f=−1 となる。u→∞ で f→0 となり、曲面は回転軸に漸近する。
問題 1.6 ★★ 猿の腰掛け z=x3−3xy2 のガウス曲率が K=−36(x2+y2)/(1+9(x2+y2)2)2 であることを示せ。原点は平坦点であるが、原点のどんな近傍にも接平面 z=0 の両側の点があることを確かめよ。
解答
fx=3x2−3y2, fy=−6xy, fxx=6x, fxy=−6y, fyy=−6x である。fx2+fy2=9(x2−y2)2+36x2y2=9(x2+y2)2、fxxfyy−fxy2=−36(x2+y2) なので、例 1.29 から主張が従う。原点では 2 階導関数がすべて 0 なので II=0 であり、平坦点である。極座標では z=r3cos3θ となり、どんなに小さい円の上でも正負両方の値をとる。一方、z=x4+y4 も原点で 2 階導関数がすべて 0 なので原点は平坦点(K=0)であるが、こちらは曲面全体が接平面 z=0 の片側にある。したがって、K(p)=0 だけでは局所的な形は決まらない。
問題 1.7 ★★ コンパクトな正則曲面 S⊂R3 には K>0 となる点が存在することを示せ。
解答
∣x∣ は S 上で最大値をとる。その点を p とし、R0=∣p∣>0 とする(S は 1 点ではない)。p を通る S 上の任意の単位速度曲線 α(α(0)=p)について、h(s)=∣α(s)∣2 は s=0 で最大になる。よって h′(0)=2α′(0)⋅p=0 であり、p は接平面に直交する。そこで ν(p)=p/R0 ととる。さらに h′′(0)=2(1+α′′(0)⋅p)≤0 なので、法曲率は α′′(0)⋅ν≤−1/R0 である。すべての方向で法曲率が −1/R0 以下なので、主曲率も k1,k2≤−1/R0 である。したがって K=k1k2≥1/R02>0 となる。
問題 1.8 ★★ 上半平面 {(u,v)∣v>0} 上の計量 E=G=1/v2, F=0 のガウス曲率を、系 1.32 の式で計算せよ。
解答
EG=1/v2, Ev=−2/v3 より Ev/EG=−2/v であり、(−2/v)v=2/v2 である。Gu=0 なので K=−2v2⋅v22=−1 となる。これはポアンカレの上半平面モデル(双曲平面)であり、リーマン面 第6章 でも現れる。