Lemma数学ロードマップ

07 多様体 · 第 2 章

多様体の定義と例

目安 12〜16 時間定理など 8演習 7 問

この章の目標

  • 位相多様体と滑らかな多様体の定義(ハウスドルフ性・第二可算性・極大アトラス)を正確に述べ、各条件の役割を反例で説明できる
  • 球面・射影空間・積多様体が多様体であることを、座標変換を計算して示せる
  • 滑らかな写像と微分同相を局所座標で扱える
  • 隆起関数と 1 の分割を構成できる

前提:第1章、微分積分学 第8章、集合と位相 第3章〜第5章

第1章の最後で見たように、曲面の内在的な幾何は、局所的なパラメータ表示と、その取り替えに関する規則だけから組み立てられる。そこで、外側の空間を忘れて「局所的に Rn\mathbb{R}^n と同じで、座標の取り替えが滑らかな空間」を定義する。これが多様体である。

2.1 位相多様体

定義 2.1(位相多様体, topological manifold)位相空間 MM が次の 3 条件を満たすとき、nn 次元位相多様体という。

  1. MM はハウスドルフ空間である。
  2. MM は第二可算(可算な開基をもつ)である。
  3. MM は局所ユークリッド的である:各点 pp は、Rn\mathbb{R}^n の開集合と同相な開近傍をもつ。

例 2.2 Rn\mathbb{R}^n とその開集合、Rn\mathbb{R}^n の開集合 UU 上の連続関数 f ⁣:U→Rkf\colon U \to \mathbb{R}^k のグラフ(射影 (x,f(x))↦x(x, f(x)) \mapsto x が UU との同相写像)、球面 SnS^n(例 2.10)は位相多様体である。ハウスドルフ性と第二可算性は部分空間に遺伝するので、RN\mathbb{R}^N の部分空間については条件 3 だけを確かめればよい。

条件 1, 2 は条件 3 から従わない。

例 2.3(反例)(1) 2 つの原点をもつ直線:X=(R×{0,1})/∼X = (\mathbb{R} \times \lbrace 0, 1 \rbrace)/{\sim}、ただし t≠0t \neq 0 のとき (t,0)∼(t,1)(t, 0) \sim (t, 1) とする。XX は局所ユークリッド的で第二可算だが、二つの原点 00=[(0,0)]0_0 = [(0, 0)] と 01=[(0,1)]0_1 = [(0, 1)] はどんな近傍をとっても交わる(ともに [(t,0)]\lbrack (t, 0) \rbrack, 0<∣t∣<ε0 < \lvert t \rvert < \varepsilon を含む)ので、ハウスドルフでない。点列 [(1/k,0)][(1/k, 0)] は 000_0 にも 010_1 にも収束し、極限の一意性が壊れる(演習問題 2.1)。

(2) 非可算個の R\mathbb{R} の非交和 ⨆λ∈RR\bigsqcup_{\lambda \in \mathbb{R}}\mathbb{R} はハウスドルフで局所ユークリッド的だが、第二可算でない。より本質的な例に長い直線 (long line) がある(主張のみ)。これは連結でハウスドルフかつ局所ユークリッド的だが、第二可算でなく、1 の分割(定理 2.22)が存在しない。第二可算性は 1 の分割を通じて、リーマン計量の存在(第6章)やユークリッド空間への埋め込み(第3章)を保証する。

(3) 座標軸の和集合 {(x,y)∈R2∣xy=0}\lbrace (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid xy = 0 \rbrace は原点で局所ユークリッド的でない(演習問題 2.3)。

注意 2.4(次元の不変性)Rn\mathbb{R}^n と Rm\mathbb{R}^m の空でない開集合が同相ならば n=mn = m である(ブラウワーの領域不変性定理。証明は 位相幾何学 第5章 のホモロジーを用いる)。したがって、空でない位相多様体の次元は well-defined である。微分同相の場合は線形代数だけで示せる(命題 2.17)。

2.2 座標近傍と滑らかな構造

定義 2.5(チャート・座標変換・アトラス)MM を nn 次元位相多様体とする。

  • 開集合 U⊂MU \subset M と、UU から Rn\mathbb{R}^n の開集合 φ(U)\varphi(U) への同相写像 φ\varphi の組 (U,φ)(U, \varphi) を座標近傍(チャート, chart)という。rir^i を Rn\mathbb{R}^n の標準座標として xi=ri∘φx^i = r^i \circ \varphi を局所座標といい、φ=(x1,…,xn)\varphi = (x^1, \dots, x^n) と書く。
  • 二つのチャート (U,φ)(U, \varphi), (V,ψ)(V, \psi) は、U∩V=∅U \cap V = \emptyset であるか、座標変換 (transition map) ψ∘φ−1 ⁣:φ(U∩V)→ψ(U∩V)\psi \circ \varphi^{-1}\colon \varphi(U \cap V) \to \psi(U \cap V) が C∞C^\infty 級の微分同相であるとき、滑らかに両立する (smoothly compatible) という。
  • 互いに滑らかに両立するチャートの族で MM を覆うものを滑らかなアトラス (smooth atlas) という。他のどのアトラスにも真に含まれないアトラスを極大アトラスという。

座標変換の逆写像は φ∘ψ−1\varphi \circ \psi^{-1} なので、両立性は「ψ∘φ−1\psi \circ \varphi^{-1} と φ∘ψ−1\varphi \circ \psi^{-1} がともに滑らか」と同じことである。

命題 2.6 滑らかなアトラス A\mathcal{A} は、ただ一つの極大アトラス A‾\overline{\mathcal{A}} に含まれる。A‾\overline{\mathcal{A}} は、A\mathcal{A} のすべてのチャートと滑らかに両立するチャート全体である。

証明. A‾\overline{\mathcal{A}} を上のように定める。(U,φ),(V,ψ)∈A‾(U, \varphi), (V, \psi) \in \overline{\mathcal{A}} が両立することを示す。x∈φ(U∩V)x \in \varphi(U \cap V)、p=φ−1(x)p = \varphi^{-1}(x) とし、p∈Wp \in W となる (W,θ)∈A(W, \theta) \in \mathcal{A} をとる。φ(U∩V∩W)\varphi(U \cap V \cap W) 上で ψ∘φ−1=(ψ∘θ−1)∘(θ∘φ−1)\psi \circ \varphi^{-1} = (\psi \circ \theta^{-1}) \circ (\theta \circ \varphi^{-1}) であり、右辺は滑らかな写像の合成なので滑らかである。したがって ψ∘φ−1\psi \circ \varphi^{-1} は各点の近くで滑らかであり、φ∘ψ−1\varphi \circ \psi^{-1} も同様である。よって A‾\overline{\mathcal{A}} はアトラスである。A‾\overline{\mathcal{A}} のすべてのチャートと両立するチャートは、特に A\mathcal{A} のチャートとも両立するから A‾\overline{\mathcal{A}} に属する。つまり A‾\overline{\mathcal{A}} は極大である。A\mathcal{A} を含む極大アトラス B\mathcal{B} があれば、そのチャートは A\mathcal{A} と両立するので B⊂A‾\mathcal{B} \subset \overline{\mathcal{A}} となり、極大性から B=A‾\mathcal{B} = \overline{\mathcal{A}} である。□\square

定義 2.7(滑らかな多様体, smooth manifold)位相多様体 MM と、その上の極大アトラス(滑らかな構造 (smooth structure))の組を滑らかな多様体という。極大アトラスに属するチャートを、単に MM のチャートという。

命題 2.6 により、滑らかな構造を与えるには、何か一つのアトラスを与えれば十分である。

例 2.8 R\mathbb{R} 上のアトラス A1={(R,id)}\mathcal{A}_1 = \lbrace (\mathbb{R}, \mathrm{id}) \rbrace と A2={(R,ψ)}\mathcal{A}_2 = \lbrace (\mathbb{R}, \psi) \rbrace(ψ(x)=x3\psi(x) = x^3)を考える。id∘ψ−1(y)=y1/3\mathrm{id} \circ \psi^{-1}(y) = y^{1/3} は 00 で微分可能でないから、両者は両立せず、異なる滑らかな構造を定める。しかし後で見るように(例 2.16 (4))、この二つは微分同相である。「異なる構造」と「微分同相でない構造」は区別しなければならない。

2.3 多様体の例

例 2.9(開集合・グラフ・GL⁡n\operatorname{GL}_n)滑らかな多様体の開集合は、チャートを制限すれば同じ次元の多様体になる(開部分多様体)。M⁡n(R)≅Rn2\operatorname{M}_n(\mathbb{R}) \cong \mathbb{R}^{n^2} の中で det⁡\det は連続なので、GL⁡n(R)=det⁡−1(R∖{0})\operatorname{GL}_n(\mathbb{R}) = \det^{-1}(\mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace) は開集合であり、n2n^2 次元多様体である。滑らかな f ⁣:U→Rkf\colon U \to \mathbb{R}^k のグラフは、ただ一つのチャート (x,f(x))↦x(x, f(x)) \mapsto x からなるアトラスをもつ。SL⁡n(R)\operatorname{SL}_n(\mathbb{R}) や O⁡(n)\operatorname{O}(n) が多様体であることは、第3章の正則値定理で示す。

例 2.10(球面と立体射影)N=(0,…,0,1)N = (0, \dots, 0, 1), S=−N∈SnS = -N \in S^n とし、

σN(x)=(x1,…,xn)1−xn+1(x∈Sn∖{N}),σS(x)=(x1,…,xn)1+xn+1(x∈Sn∖{S})\sigma_N(x) = \frac{(x^1, \dots, x^n)}{1 - x^{n+1}} \quad (x \in S^n \setminus \lbrace N \rbrace), \qquad \sigma_S(x) = \frac{(x^1, \dots, x^n)}{1 + x^{n+1}} \quad (x \in S^n \setminus \lbrace S \rbrace)

と定める(立体射影 (stereographic projection))。σN(x)\sigma_N(x) は、NN と xx を結ぶ直線が超平面 xn+1=0x^{n+1} = 0 と交わる点である。逆写像は

σN−1(u)=(2u,∣u∣2−1)∣u∣2+1\sigma_N^{-1}(u) = \frac{(2u, \lvert u \rvert^2 - 1)}{\lvert u \rvert^2 + 1}

である。実際、右辺のノルムの 2 乗は (4∣u∣2+(∣u∣2−1)2)/(∣u∣2+1)2=1(4\lvert u \rvert^2 + (\lvert u \rvert^2 - 1)^2)/(\lvert u \rvert^2 + 1)^2 = 1 であり、右辺に σN\sigma_N を施すと 2u∣u∣2+1/2∣u∣2+1=u\frac{2u}{\lvert u \rvert^2 + 1} \big/ \frac{2}{\lvert u \rvert^2 + 1} = u となる。同様に

σS∘σN−1(u)=2u∣u∣2+1/2∣u∣2∣u∣2+1=u∣u∣2(u∈Rn∖{0})\sigma_S \circ \sigma_N^{-1}(u) = \frac{2u}{\lvert u \rvert^2 + 1} \Big/ \frac{2\lvert u \rvert^2}{\lvert u \rvert^2 + 1} = \frac{u}{\lvert u \rvert^2} \qquad (u \in \mathbb{R}^n \setminus \lbrace 0 \rbrace)

となる。これは滑らかで、自分自身が逆写像である。よって {σN,σS}\lbrace \sigma_N, \sigma_S \rbrace は SnS^n のアトラスであり、SnS^n は nn 次元の滑らかな多様体になる。SnS^n は Rn+1\mathbb{R}^{n+1} の部分空間としてハウスドルフかつ第二可算である。

例 2.11(実射影空間)Rn+1∖{0}\mathbb{R}^{n+1} \setminus \lbrace 0 \rbrace に x∼λxx \sim \lambda x(λ≠0\lambda \neq 0)で同値関係を入れた商空間を RPn\mathbb{R}P^n とし、xx の類を [x0:⋯:xn][x^0 : \dots : x^n] と書く。RPn\mathbb{R}P^n は原点を通る直線全体の空間である。π\pi を商写像とする。

  • チャート:Ui={[x]∣xi≠0}U_i = \lbrace [x] \mid x^i \neq 0 \rbrace は開集合である(π−1(Ui)\pi^{-1}(U_i) が開集合なので)。φi([x])=(x0/xi,…,xi−1/xi,xi+1/xi,…,xn/xi)\varphi_i([x]) = (x^0/x^i, \dots, x^{i-1}/x^i, x^{i+1}/x^i, \dots, x^n/x^i) は代表元のとり方によらず、逆写像 u↦[u1:⋯:ui:1:ui+1:⋯:un]u \mapsto [u^1 : \dots : u^i : 1 : u^{i+1} : \dots : u^n](11 は ii 番目)をもつ同相写像 Ui→RnU_i \to \mathbb{R}^n である。
  • 座標変換:φj∘φi−1(u)\varphi_j \circ \varphi_i^{-1}(u) は、uu の ii 番目に 11 を挿入したベクトルを、その jj 番目の成分で割り、jj 番目を取り除いたものである。定義域ではその成分は 00 でないので、座標変換は有理関数で与えられて滑らかである。例えば RP1\mathbb{R}P^1 では t=x1/x0t = x^1/x^0, s=x0/x1s = x^0/x^1 であり、U0∩U1U_0 \cap U_1 上で s=1/ts = 1/t となる。
  • 第二可算性:WW が開集合なら π−1(π(W))=⋃λ≠0λW\pi^{-1}(\pi(W)) = \bigcup_{\lambda \neq 0}\lambda W も開集合なので、π\pi は開写像である。したがって、可算開基の π\pi による像は RPn\mathbb{R}P^n の開基になる。
  • ハウスドルフ性:[x]≠[y][x] \neq [y] とする。f(x)=0f(x) = 0 または f(y)=0f(y) = 0 となる線形形式 ff の全体は、双対空間の二つの真部分空間の和集合である。ベクトル空間は二つの真部分空間の和集合にはならない(a∈A∖Ba \in A \setminus B, b∈B∖Ab \in B \setminus A をとると a+b∉A∪Ba + b \notin A \cup B)ので、f(x)≠0≠f(y)f(x) \neq 0 \neq f(y) となる ff がある。Uf={[z]∣f(z)≠0}U_f = \lbrace [z] \mid f(z) \neq 0 \rbrace は開集合で、[z]↦z/f(z)[z] \mapsto z/f(z) により超平面 f−1(1)≅Rnf^{-1}(1) \cong \mathbb{R}^n と同相である。[x],[y][x], [y] はハウスドルフ空間 UfU_f の中で分離でき、UfU_f の開集合は RPn\mathbb{R}P^n でも開集合である。

以上から RPn\mathbb{R}P^n は nn 次元の滑らかな多様体である。また RPn=Sn/(x∼−x)\mathbb{R}P^n = S^n/(x \sim -x) でもあるので、RPn\mathbb{R}P^n はコンパクトである。

例 2.12(複素射影空間)例 2.11 で R\mathbb{R} を C\mathbb{C} に替えたものを CPn\mathbb{C}P^n という。チャートは Cn=R2n\mathbb{C}^n = \mathbb{R}^{2n} への写像で、座標変換は正則関数なので滑らかである。したがって CPn\mathbb{C}P^n は 2n2n 次元の滑らかな多様体(実は複素多様体)である。CP1\mathbb{C}P^1 の座標変換は w=1/zw = 1/z である。一方、S2S^2 で u=σN(p)u = \sigma_N(p) を複素数とみると、例 2.10 より σS(p)=u/∣u∣2=1/uˉ\sigma_S(p) = u/\lvert u \rvert^2 = 1/\bar{u} となる。そこで σS\sigma_S の代わりにその複素共役 σS‾\overline{\sigma_S} を使えば、座標変換はちょうど u↦1/uu \mapsto 1/u になる。したがって、[z0:z1]↦σN−1(z1/z0)[z^0 : z^1] \mapsto \sigma_N^{-1}(z^1/z^0)(z0≠0z^0 \neq 0)、[0:1]↦N[0 : 1] \mapsto N で定まる写像は、どちらのチャートでも局所表示が恒等写像となり、CP1\mathbb{C}P^1 と S2S^2 の微分同相を与える(リーマン球面, 複素関数論 第1章 1.2 節)。

例 2.13(積多様体)M,NM, N をそれぞれ m,nm, n 次元の滑らかな多様体とする。M×NM \times N は、チャートの積 (U×V,φ×ψ)(U \times V, \varphi \times \psi) 全体をアトラスとして m+nm + n 次元の多様体になる。座標変換は (φ′∘φ−1)×(ψ′∘ψ−1)(\varphi' \circ \varphi^{-1}) \times (\psi' \circ \psi^{-1}) なので滑らかである。特に nn 次元トーラス Tn=S1×⋯×S1T^n = S^1 \times \dots \times S^1 はコンパクトな nn 次元多様体である。

2.4 滑らかな写像と微分同相

定義 2.14(滑らかな写像, smooth map)M,NM, N を滑らかな多様体とする。写像 F ⁣:M→NF\colon M \to N が滑らかであるとは、各 p∈Mp \in M に対し、pp のまわりのチャート (U,φ)(U, \varphi) と F(p)F(p) のまわりのチャート (V,ψ)(V, \psi) で、F(U)⊂VF(U) \subset V かつ局所表示 F^=ψ∘F∘φ−1 ⁣:φ(U)→ψ(V)\hat{F} = \psi \circ F \circ \varphi^{-1}\colon \varphi(U) \to \psi(V) が滑らかとなるものが存在することをいう。滑らかな関数 M→RM \to \mathbb{R} の全体を C∞(M)C^\infty(M) と書く。滑らかな全単射で逆写像も滑らかなものを微分同相写像 (diffeomorphism) という。

局所表示 F^\hat{F} は連続でチャートは同相写像なので、滑らかな写像は連続である。

命題 2.15 (1) FF が滑らかならば、任意のチャート (U,φ)(U, \varphi), (V,ψ)(V, \psi) に対し、ψ∘F∘φ−1\psi \circ F \circ \varphi^{-1} は φ(U∩F−1(V))\varphi(U \cap F^{-1}(V)) 上で滑らかである。 (2) 滑らかな写像の合成は滑らかである。

証明. (1) p∈U∩F−1(V)p \in U \cap F^{-1}(V) とし、定義 2.14 のチャート (U0,φ0)(U_0, \varphi_0), (V0,ψ0)(V_0, \psi_0) をとる。φ(p)\varphi(p) の近くで ψ∘F∘φ−1=(ψ∘ψ0−1)∘(ψ0∘F∘φ0−1)∘(φ0∘φ−1)\psi \circ F \circ \varphi^{-1} = (\psi \circ \psi_0^{-1}) \circ (\psi_0 \circ F \circ \varphi_0^{-1}) \circ (\varphi_0 \circ \varphi^{-1}) であり、右辺の 3 つはどれも滑らかである。(2) F ⁣:M→NF\colon M \to N, G ⁣:N→PG\colon N \to P とし、p∈Mp \in M をとる。G(F(p))G(F(p)) のまわりのチャート (W,θ)(W, \theta) をとり、G−1(W)G^{-1}(W) に含まれる F(p)F(p) のまわりのチャート (V,ψ)(V, \psi)、F−1(V)F^{-1}(V) に含まれる pp のまわりのチャート (U,φ)(U, \varphi) をとる。(1) より θ∘(G∘F)∘φ−1=(θ∘G∘ψ−1)∘(ψ∘F∘φ−1)\theta \circ (G \circ F) \circ \varphi^{-1} = (\theta \circ G \circ \psi^{-1}) \circ (\psi \circ F \circ \varphi^{-1}) は滑らかである。□\square

例 2.16 (1) 包含写像 ι ⁣:Sn→Rn+1\iota\colon S^n \to \mathbb{R}^{n+1} は滑らかである。局所表示 ι∘σN−1(u)=(2u,∣u∣2−1)/(∣u∣2+1)\iota \circ \sigma_N^{-1}(u) = (2u, \lvert u \rvert^2 - 1)/(\lvert u \rvert^2 + 1) が滑らかだからである。同様に、Rn+1\mathbb{R}^{n+1} の開集合上の滑らかな写像 GG を SnS^n に制限したものは滑らかである(G∣Sn=G∘ιG\vert_{S^n} = G \circ \iota と命題 2.15 (2))。 (2) チャート φ ⁣:U→φ(U)\varphi\colon U \to \varphi(U) 自身は微分同相写像である(局所表示が恒等写像)。 (3) 射影 π ⁣:Sn→RPn\pi\colon S^n \to \mathbb{R}P^n は滑らかである。{x0≠0}\lbrace x^0 \neq 0 \rbrace 上で φ0∘π(x)=(x1/x0,…,xn/x0)\varphi_0 \circ \pi(x) = (x^1/x^0, \dots, x^n/x^0) となり、これは Rn+1\mathbb{R}^{n+1} の開集合上の滑らかな写像の制限だからである。 (4) 例 2.8 の F(x)=x3F(x) = x^3 は、(R,A2)(\mathbb{R}, \mathcal{A}_2) から (R,A1)(\mathbb{R}, \mathcal{A}_1) への微分同相写像である。局所表示は id∘F∘ψ−1(y)=(y1/3)3=y\mathrm{id} \circ F \circ \psi^{-1}(y) = (y^{1/3})^3 = y、逆写像の局所表示は ψ∘F−1∘id(y)=(y1/3)3=y\psi \circ F^{-1} \circ \mathrm{id}(y) = (y^{1/3})^3 = y であり、どちらも滑らかだからである。

命題 2.17(次元の微分同相不変性)空でない滑らかな多様体 MmM^m, NnN^n の間に微分同相写像があれば m=nm = n である。

証明. 局所表示 F^\hat{F} と、逆写像の局所表示 G^\hat{G} は、ある点の近くで G^∘F^=id\hat{G} \circ \hat{F} = \mathrm{id}, F^∘G^=id\hat{F} \circ \hat{G} = \mathrm{id} を満たす。連鎖律により DG^ DF^=ImD\hat{G}\ D\hat{F} = I_m, DF^ DG^=InD\hat{F}\ D\hat{G} = I_n となり、DF^ ⁣:Rm→RnD\hat{F}\colon \mathbb{R}^m \to \mathbb{R}^n は線形同型である。よって m=nm = n である。□\square

2.5 隆起関数

多様体上には、局所的に好きな形をした滑らかな関数が豊富にある。これは複素関数論の正則関数(一致の定理により、局所的な値が全体を決める)と対照的な性質であり、以下の議論はすべてこれに基づく。

補題 2.18 f(t)=e−1/tf(t) = e^{-1/t}(t>0t > 0)、f(t)=0f(t) = 0(t≤0t \leq 0)で定まる f ⁣:R→Rf\colon \mathbb{R} \to \mathbb{R} は滑らかである。

証明. t>0t > 0 では、帰納法により f(k)(t)=pk(1/t)e−1/tf^{(k)}(t) = p_k(1/t)e^{-1/t} と書ける。ここで pkp_k は多項式で、p0=1p_0 = 1, pk+1(s)=s2(pk(s)−pk′(s))p_{k+1}(s) = s^2(p_k(s) - p_k'(s)) である。t→+0t \to +0 のとき t−me−1/t=sme−s→0t^{-m}e^{-1/t} = s^me^{-s} \to 0(s=1/t→∞s = 1/t \to \infty)だから、f(k)(t)→0f^{(k)}(t) \to 0 であり、さらに f(k)(t)/t→0f^{(k)}(t)/t \to 0 である。そこで f(k)(0)=0f^{(k)}(0) = 0 を仮定すると、(f(k)(t)−f(k)(0))/t(f^{(k)}(t) - f^{(k)}(0))/t は t→+0t \to +0 で 00 に収束し、t<0t < 0 では 00 である。よって f(k+1)(0)=0f^{(k+1)}(0) = 0 が存在する。帰納法により ff は C∞C^\infty 級である。□\square

h(t)=f(2−t)/(f(2−t)+f(t−1))h(t) = f(2 - t)/(f(2 - t) + f(t - 1)) とおく。分母は常に正である(t<2t < 2 なら第 1 項、t>1t > 1 なら第 2 項が正)。したがって hh は滑らかで、t≤1t \leq 1 で h=1h = 1、t≥2t \geq 2 で h=0h = 0、その間で 0<h<10 < h < 1 となる。H(x)=h(∣x∣)H(x) = h(\lvert x \rvert) は Rn\mathbb{R}^n 上で滑らかであり(原点の近くでは定数 1、原点以外では ∣x∣\lvert x \rvert が滑らか)、閉球 B‾(0,1)\overline{B}(0, 1) 上で 11、∣x∣≥2\lvert x \rvert \geq 2 で 00 となる。

命題 2.19(隆起関数, bump function)MM を滑らかな多様体、W⊂MW \subset M を開集合、p∈Wp \in W とする。pp のある近傍で 11 に等しく、台 supp⁡ψ={ψ≠0}‾\operatorname{supp}\psi = \overline{\lbrace \psi \neq 0 \rbrace} が WW に含まれるコンパクト集合となる滑らかな関数 ψ ⁣:M→[0,1]\psi\colon M \to [0, 1] が存在する。

証明. pp のまわりのチャート (U,φ)(U, \varphi) を、U⊂WU \subset W、φ(p)=0\varphi(p) = 0、B‾(0,2)⊂φ(U)\overline{B}(0, 2) \subset \varphi(U) となるようにとる(平行移動と拡大をすればよい)。K=φ−1(B‾(0,2))K = \varphi^{-1}(\overline{B}(0, 2)) はコンパクトであり、MM がハウスドルフなので閉集合である。ψ\psi を UU 上では H∘φH \circ \varphi、M∖KM \setminus K 上では 00 と定める。U∖KU \setminus K 上では両者はともに 00 なので矛盾はない。開集合 UU と M∖KM \setminus K は MM を覆い、それぞれの上で ψ\psi は滑らかなので、ψ\psi は滑らかである。φ−1(B(0,1))\varphi^{-1}(B(0, 1)) 上で ψ=1\psi = 1 であり、supp⁡ψ⊂K⊂W\operatorname{supp}\psi \subset K \subset W である。□\square

2.6 1 の分割

局所的な構成(チャートの上での定義)を貼り合わせて大域的な対象を作る道具が、1 の分割である。

定義 2.20(1 の分割, partition of unity)部分集合の族 {Aα}\lbrace A_\alpha \rbrace は、各点が有限個の AαA_\alpha としか交わらない近傍をもつとき、局所有限 (locally finite) であるという。MM の開被覆 {Uα}α∈A\lbrace U_\alpha \rbrace_{\alpha \in A} に従属する 1 の分割とは、滑らかな関数 ψα ⁣:M→[0,1]\psi_\alpha\colon M \to [0, 1](α∈A\alpha \in A)の族で、次を満たすものをいう。

  1. supp⁡ψα⊂Uα\operatorname{supp}\psi_\alpha \subset U_\alpha。
  2. {supp⁡ψα}α∈A\lbrace \operatorname{supp}\psi_\alpha \rbrace_{\alpha \in A} は局所有限である。
  3. ∑αψα=1\sum_{\alpha}\psi_\alpha = 1(各点の近くでは有限和である)。

補題 2.21(コンパクト集合による近似)位相多様体 MM には、コンパクト集合の列 K1⊂K2⊂⋯K_1 \subset K_2 \subset \cdots で、Kj⊂(Kj+1)∘K_j \subset (K_{j+1})^\circ かつ ⋃jKj=M\bigcup_j K_j = M を満たすものが存在する。

証明. 各点は、閉包がコンパクトな開近傍をもつ(チャートで開球の逆像をとる。閉球の逆像はコンパクトで、ハウスドルフ性から閉集合なので、開球の逆像の閉包はその中に含まれる)。可算開基のうち閉包がコンパクトなもの全体 {Bi}i∈N\lbrace B_i \rbrace_{i \in \mathbb{N}} も開基になる(p∈Op \in O が開集合なら、pp の閉包コンパクトな近傍 VV に対し p∈B⊂O∩Vp \in B \subset O \cap V となる基底元 BB をとればよい)。K1=B1‾K_1 = \overline{B_1} とし、KjK_j が定まったら、KjK_j を覆う B1,…,BmB_1, \dots, B_m の mm を m≥j+1m \geq j + 1 となるようにとって Kj+1=B1‾∪⋯∪Bm‾K_{j+1} = \overline{B_1} \cup \dots \cup \overline{B_m} とおく。すると Kj⊂B1∪⋯∪Bm⊂(Kj+1)∘K_j \subset B_1 \cup \dots \cup B_m \subset (K_{j+1})^\circ であり、Bj+1⊂Kj+1B_{j+1} \subset K_{j+1} だから ⋃jKj=M\bigcup_j K_j = M である。□\square

定理 2.22(1 の分割の存在)滑らかな多様体 MM の任意の開被覆 {Uα}α∈A\lbrace U_\alpha \rbrace_{\alpha \in A} に対し、それに従属する 1 の分割が存在する。

証明. 補題 2.21 の KjK_j をとり、K0=K−1=∅K_0 = K_{-1} = \emptyset とおく。j≥1j \geq 1 に対し、コンパクト集合 Aj=Kj∖(Kj−1)∘A_j = K_j \setminus (K_{j-1})^\circ と開集合 Wj=(Kj+1)∘∖Kj−2W_j = (K_{j+1})^\circ \setminus K_{j-2} を考えると、Aj⊂WjA_j \subset W_j である(Kj−2⊂(Kj−1)∘K_{j-2} \subset (K_{j-1})^\circ より)。

各 p∈Ajp \in A_j について、p∈Uα(p)p \in U_{\alpha(p)} となる α(p)\alpha(p) を選ぶ。命題 2.19 の証明と同様に、pp のまわりのチャート φ\varphi で φ−1(B‾(0,2))⊂Uα(p)∩Wj\varphi^{-1}(\overline{B}(0, 2)) \subset U_{\alpha(p)} \cap W_j となるものをとり、fp=H∘φf_p = H \circ \varphi(外では 00)とおく。fpf_p は開集合 Dp=φ−1(B(0,1))D_p = \varphi^{-1}(B(0, 1)) 上で 11 であり、supp⁡fp⊂Uα(p)∩Wj\operatorname{supp}f_p \subset U_{\alpha(p)} \cap W_j はコンパクトである。AjA_j はコンパクトなので、有限個の DpD_p で覆える。これらをすべての jj について集めた可算族を {fk}\lbrace f_k \rbrace とし、fkf_k に対応する添字を α(k)\alpha(k) とする。

  • 局所有限:q∈Mq \in M は、ある mm について (Km)∘(K_m)^\circ に含まれる。j≥m+2j \geq m + 2 なら Wj∩Km=∅W_j \cap K_m = \emptyset なので、(Km)∘(K_m)^\circ と交わる supp⁡fk\operatorname{supp}f_k は j≤m+1j \leq m + 1 の段階で選んだ有限個だけである。
  • 正値性:q∈Mq \in M に対し、q∈Kjq \in K_j となる最小の jj をとると、q∈Ajq \in A_j である。したがって、ある DpD_p が qq を含み、fp(q)=1f_p(q) = 1 となる。

よって f=∑kfkf = \sum_k f_k は局所有限和として滑らかで、至る所で正である。gk=fk/fg_k = f_k/f とおき、ψα=∑k ⁣:α(k)=αgk\psi_\alpha = \sum_{k \colon \alpha(k) = \alpha} g_k(該当する kk がなければ 00)と定める。∑αψα=∑kgk=1\sum_\alpha\psi_\alpha = \sum_k g_k = 1 である。局所有限な族では閉包の和が和の閉包に等しいので、supp⁡ψα=⋃α(k)=αsupp⁡gk⊂Uα\operatorname{supp}\psi_\alpha = \bigcup_{\alpha(k) = \alpha}\operatorname{supp}g_k \subset U_\alpha となる。{supp⁡ψα}\lbrace \operatorname{supp}\psi_\alpha \rbrace の局所有限性は {supp⁡fk}\lbrace \operatorname{supp}f_k \rbrace の局所有限性から従う。□\square

系 2.23 (1)(滑らかなウリゾーンの補題)互いに交わらない閉集合 A,B⊂MA, B \subset M に対し、AA 上で 00、BB 上で 11 となる滑らかな f ⁣:M→[0,1]f\colon M \to [0, 1] が存在する。 (2)(拡張)閉集合 AA を含む開集合 UU と g∈C∞(U)g \in C^\infty(U) に対し、AA 上で gg に一致し、台が UU に含まれる G∈C∞(M)G \in C^\infty(M) が存在する。

証明. (1) 開被覆 {M∖A,M∖B}\lbrace M \setminus A, M \setminus B \rbrace に従属する 1 の分割 ψ1,ψ2\psi_1, \psi_2 をとり、f=ψ1f = \psi_1 とおく。AA 上では ψ1=0\psi_1 = 0、BB 上では ψ2=0\psi_2 = 0 なので ψ1=1\psi_1 = 1 である。(2) {U,M∖A}\lbrace U, M \setminus A \rbrace に従属する 1 の分割 ψ0,ψ1\psi_0, \psi_1 をとり、G=ψ0gG = \psi_0 g(UU の外では 00)とおく。GG は UU 上と開集合 M∖supp⁡ψ0M \setminus \operatorname{supp}\psi_0 上でそれぞれ滑らかである。AA 上では ψ1=0\psi_1 = 0 なので G=gG = g となる。□\square

補足

1 の分割は「局所的に定義したものを重み付きで平均して貼り合わせる」道具である。凸な条件(正定値性、正の向き、など)は平均で保たれるので、リーマン計量(第6章)、体積形式(第6章)、ユークリッド空間への埋め込み(第3章)の構成に使われる。

2.7 異種球面

同じ位相多様体の上に、互いに微分同相でない滑らかな構造が存在しうる。以下は主張のみ述べる。

  • ミルナー(1956)は、S7S^7 と同相だが微分同相でない滑らかな多様体(異種球面 (exotic sphere))を発見した。ケルヴェア–ミルナーによれば、S7S^7 と同相な滑らかな多様体は、向きを保つ微分同相を除いてちょうど 28 個ある。
  • 3 次元以下では、位相多様体は滑らかな構造をもち、それは微分同相を除いて一意である。Rn\mathbb{R}^n も n≠4n \neq 4 なら滑らかな構造が一意であるが、R4\mathbb{R}^4 には互いに微分同相でない滑らかな構造が非可算個ある(ドナルドソン、フリードマン、トーブスらの仕事)。
  • 滑らかな構造をまったくもたない位相多様体も存在する(4 次元の E8E_8 多様体など)。

例 2.8 の二つの構造は異なるが微分同相であった。異種球面の現象はこれとは本質的に違い、微分同相で移りあえない構造である。本科目で扱う多様体は、すべて具体的な構造をもつものである。

まとめ

  • 多様体は、局所ユークリッド的でハウスドルフかつ第二可算な空間に、座標変換が滑らかなアトラス(の極大化)を与えたものである。
  • ハウスドルフ性を外すと極限が一意でなくなり(2 つの原点をもつ直線)、第二可算性を外すと 1 の分割が存在しなくなる(長い直線)。
  • SnS^n は立体射影で、座標変換は u↦u/∣u∣2u \mapsto u/\lvert u \rvert^2 である。RPn\mathbb{R}P^n, CPn\mathbb{C}P^n は斉次座標の比で、座標変換は有理式(正則関数)である。CP1≅S2\mathbb{C}P^1 \cong S^2 である。
  • 滑らかな写像は局所表示で定義し、それはチャートのとり方によらない。微分同相は次元を保つ。
  • e−1/te^{-1/t} から隆起関数が作られ、第二可算性を使うと任意の開被覆に従属する 1 の分割が存在する。
  • 同じ位相多様体上に微分同相でない滑らかな構造がありうる(異種球面)。

演習問題

問題 2.1 ★ 例 2.3 (1) の 2 つの原点をもつ直線 XX が局所ユークリッド的かつ第二可算であること、および点列 [(1/k,0)][(1/k, 0)] が 000_0 と 010_1 の両方に収束することを示せ。

解答

商写像を qq とする。Vi=q(R×{i})V_i = q(\mathbb{R} \times \lbrace i \rbrace) は q−1(Vi)=(R×{i})∪((R∖{0})×{1−i})q^{-1}(V_i) = (\mathbb{R} \times \lbrace i \rbrace) \cup ((\mathbb{R} \setminus \lbrace 0 \rbrace) \times \lbrace 1 - i \rbrace) が開集合なので開集合であり、t↦q(t,i)t \mapsto q(t, i) は R\mathbb{R} から ViV_i への同相写像である。V0∪V1=XV_0 \cup V_1 = X なので局所ユークリッド的である。また、R\mathbb{R} の可算開基の二つの像の和が XX の可算開基になる。000_0 の任意の近傍は、ある ε>0\varepsilon > 0 について q((−ε,ε)×{0})q((-\varepsilon, \varepsilon) \times \lbrace 0 \rbrace) を含み、kk が大きければ [(1/k,0)][(1/k, 0)] はそこに入る。[(1/k,0)]=[(1/k,1)][(1/k, 0)] = [(1/k, 1)] なので、010_1 についても同じである。

問題 2.2 ★ S1S^1 の上半円 U={y>0}U = \lbrace y > 0 \rbrace 上のチャート φ(x,y)=x\varphi(x, y) = x と、立体射影 σN(x,y)=x/(1−y)\sigma_N(x, y) = x/(1 - y) が滑らかに両立することを示せ。

解答

U∩(S1∖{N})U \cap (S^1 \setminus \lbrace N \rbrace) は x≠0x \neq 0 の部分で、φ\varphi による像は (−1,0)∪(0,1)(-1, 0) \cup (0, 1) である。そこで σN∘φ−1(x)=x/(1−1−x2)\sigma_N \circ \varphi^{-1}(x) = x/(1 - \sqrt{1 - x^2}) は滑らかである(分母は 00 でない)。逆向きは、σN−1(u)=(2u,u2−1)/(u2+1)\sigma_N^{-1}(u) = (2u, u^2 - 1)/(u^2 + 1) より φ∘σN−1(u)=2u/(u2+1)\varphi \circ \sigma_N^{-1}(u) = 2u/(u^2 + 1) であり(定義域は y>0y > 0、すなわち ∣u∣>1\lvert u \rvert > 1)、これも滑らかである。

問題 2.3 ★★ X={(x,y)∈R2∣xy=0}X = \lbrace (x, y) \in \mathbb{R}^2 \mid xy = 0 \rbrace は位相多様体でないことを示せ。

解答

原点 00 の開近傍 UU と、Rn\mathbb{R}^n の開集合への同相写像 φ\varphi があったとする。ε>0\varepsilon > 0 を小さくとって C=X∩(−ε,ε)2⊂UC = X \cap (-\varepsilon, \varepsilon)^2 \subset U とし、φ(C)\varphi(C) に含まれる φ(0)\varphi(0) 中心の開球 BB をとる。O=φ−1(B)O = \varphi^{-1}(B) は 00 の開近傍で、CC に含まれる。C∖{0}C \setminus \lbrace 0 \rbrace は 4 本の開線分 I1,…,I4I_1, \dots, I_4 の非交和であり、OO は 00 の近傍なので、各 O∩IkO \cap I_k は空でない開集合である。したがって O∖{0}O \setminus \lbrace 0 \rbrace は少なくとも 4 つの連結成分をもつ。一方、O∖{0}≅B∖{点}O \setminus \lbrace 0 \rbrace \cong B \setminus \lbrace \text{点} \rbrace の連結成分の数は、n≥2n \geq 2 なら 1、n=1n = 1 なら 2 である。n=0n = 0 なら {0}\lbrace 0 \rbrace が XX の開集合になるが、そうではない。いずれの場合も矛盾する。

問題 2.4 ★★ F ⁣:RP1→S1F\colon \mathbb{R}P^1 \to S^1 を F([x0:x1])=((x0)2−(x1)2(x0)2+(x1)2,2x0x1(x0)2+(x1)2)F([x^0 : x^1]) = \left( \frac{(x^0)^2 - (x^1)^2}{(x^0)^2 + (x^1)^2}, \frac{2x^0x^1}{(x^0)^2 + (x^1)^2} \right) で定めると、微分同相写像であることを示せ。

解答

右辺は (x0,x1)(x^0, x^1) について 0 次斉次なので、FF は well-defined である。チャート t=x1/x0t = x^1/x^0 では F=((1−t2)/(1+t2),2t/(1+t2))F = ((1 - t^2)/(1 + t^2), 2t/(1 + t^2)) となる。これは (−1,0)(-1, 0) からの立体射影 (a,b)↦b/(1+a)(a, b) \mapsto b/(1 + a) の逆写像である(1+a=2/(1+t2)1 + a = 2/(1 + t^2) より b/(1+a)=tb/(1 + a) = t)。したがって FF は U0U_0 から S1∖{(−1,0)}S^1 \setminus \lbrace (-1, 0) \rbrace への微分同相である。同様に、チャート s=x0/x1s = x^0/x^1 では F=((s2−1)/(s2+1),2s/(s2+1))F = ((s^2 - 1)/(s^2 + 1), 2s/(s^2 + 1)) となる。これは (1,0)(1, 0) からの立体射影 (a,b)↦b/(1−a)(a, b) \mapsto b/(1 - a) の逆写像であり(1−a=2/(s2+1)1 - a = 2/(s^2 + 1))、U1U_1 から S1∖{(1,0)}S^1 \setminus \lbrace (1, 0) \rbrace への微分同相である。F([1:0])=(1,0)F([1 : 0]) = (1, 0)、F([0:1])=(−1,0)F([0 : 1]) = (-1, 0) であり、FF は全単射で、局所的に滑らかな逆写像をもつ。よって微分同相である。

問題 2.5 ★★ K⊂MK \subset M をコンパクト集合、U⊃KU \supset K を開集合とする。KK 上で 11 に等しく、台が UU に含まれるコンパクト集合となる滑らかな ψ ⁣:M→[0,1]\psi\colon M \to [0, 1] が存在することを示せ。

解答

各 p∈Kp \in K に対し、命題 2.19 により、pp の開近傍 VpV_p 上で 11 に等しく、台が UU に含まれるコンパクト集合となる隆起関数 ψp\psi_p をとる。有限個の Vp1,…,VpmV_{p_1}, \dots, V_{p_m} で KK を覆い、g=∑iψpig = \sum_i\psi_{p_i} とおくと、KK 上で g≥1g \geq 1 である。χ(t)=1−h(1+t)\chi(t) = 1 - h(1 + t)(hh は 2.5 節の関数)は滑らかで、t≤0t \leq 0 で 00、t≥1t \geq 1 で 11、値は [0,1][0, 1] に入る。ψ=χ∘g\psi = \chi \circ g とおけば、KK 上で 11 であり、台は ⋃isupp⁡ψpi\bigcup_i\operatorname{supp}\psi_{p_i}(UU に含まれるコンパクト集合)に含まれる。

問題 2.6 ★ M,N,PM, N, P を滑らかな多様体とする。写像 F=(F1,F2) ⁣:P→M×NF = (F_1, F_2)\colon P \to M \times N が滑らかであることと、F1,F2F_1, F_2 がともに滑らかであることは同値であることを示せ。

解答

積チャート (U×V,φ×ψ)(U \times V, \varphi \times \psi) に関する局所表示は (φ∘F1∘θ−1,ψ∘F2∘θ−1)(\varphi \circ F_1 \circ \theta^{-1}, \psi \circ F_2 \circ \theta^{-1})(θ\theta は PP のチャート)である。Rm+n\mathbb{R}^{m+n} 値の写像が滑らかであることと、各成分が滑らかであることは同値である。ただし「⇐\Leftarrow」では、F(p)F(p) のまわりの積チャートに対して、F1−1(U)∩F2−1(V)F_1^{-1}(U) \cap F_2^{-1}(V) に含まれる pp のまわりのチャートをとればよい。

問題 2.7 ★★★ 任意の閉集合 A⊂RnA \subset \mathbb{R}^n に対し、f−1(0)=Af^{-1}(0) = A となる滑らかな関数 f ⁣:Rn→[0,∞)f\colon \mathbb{R}^n \to [0, \infty) が存在することを示せ。

解答

A=RnA = \mathbb{R}^n なら f=0f = 0 とすればよい。そうでなければ、開集合 Rn∖A\mathbb{R}^n \setminus A を可算個の開球 B(ck,rk)B(c_k, r_k) の和集合として表す。補題 2.18 の ff を使って gk(x)=f(rk2−∣x−ck∣2)g_k(x) = f(r_k^2 - \lvert x - c_k \rvert^2) とおくと、gkg_k は滑らかで、B(ck,rk)B(c_k, r_k) 上で正、その外では 00 である。gkg_k の台はコンパクトなので、Mk=max⁡∣α∣≤ksup⁡∣∂αgk∣M_k = \max_{\lvert \alpha \rvert \leq k}\sup\lvert \partial^\alpha g_k \rvert は有限である。そこで εk=2−k/(1+Mk)\varepsilon_k = 2^{-k}/(1 + M_k) とおき、F=∑kεkgkF = \sum_k\varepsilon_k g_k と定める。各多重指数 α\alpha について、k≥∣α∣k \geq \lvert \alpha \rvert なら ∣εk∂αgk∣≤2−k\lvert \varepsilon_k\partial^\alpha g_k \rvert \leq 2^{-k} なので、∑kεk∂αgk\sum_k\varepsilon_k\partial^\alpha g_k は一様収束する。よって FF は C∞C^\infty 級であり(項別微分)、F(x)>0F(x) > 0 となるのは xx がある B(ck,rk)B(c_k, r_k) に属するとき、すなわち x∉Ax \notin A のときに限る。

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