Lemma数学ロードマップ

P1 算数の「なぜ」 · 第 1 章

数と位取り記数法

目安 2.5〜4 時間演習 10 問

この章の目標

  • 「数える」とはどういうことかを、1 対 1 対応・集合数・順序数ということばで説明できる
  • 0 の 3 つの役割(何もないこと・空いた位・基準)を区別できる
  • 十進位取り記数法のしくみと、大きな数を 4 けたごとに区切って読む理由を説明できる
  • たし算・ひき算が使われる 4 つの場面(合併・増加・求残・求差)を区別できる
  • さくらんぼ計算と筆算の繰り上がり・繰り下がりを、「10 のまとまり」で説明できる
  • 二進法・六十進法・ローマ数字と比べて、位取り記数法のよさを説明できる

前提:特にありません。

学年の目安:数と位取りは小学 1〜4 年、たし算・ひき算は小学 1〜3 年(教科書によって前後します)

子どもにこう聞かれたら、どう答えますか。

  • 「にひゃくご は 200 と 5 だから、2005 って書くんでしょ?」
  • 「どうして 10 になったら、となりの位に 1 をうつすの?」
  • 「0 って何もないってことなのに、どうしてわざわざ書くの?」

大人にとって、数を数えたり、8+5=138 + 5 = 13 を計算したりするのはあまりにも当たり前で、「なぜ」を考えることはまずありません。けれども、0 から 9 までのたった 10 個の数字でどんな大きな数でも書ける位取り記数法は、人類が何千年もかけてたどり着いた発明です。この章では、「数える」ことの意味から始めて、位取り記数法のしくみ、そしてそのしくみの上に成り立つたし算・ひき算の筆算までを見直します。最後に、二進法や時計の六十進法、ローマ数字と比べて、私たちの書き方のどこがすぐれているのかを確かめます。

なお、この章でいう整数は、小学校の算数と同じく 0,1,2,3,…0, 1, 2, 3, \dots のことです(負の数は中学 1 年で学びます)。

何年生で習う?

学年 数 たし算・ひき算 時刻と時間
1 年 10 までの数(数える・0)、20 までの数、120 くらいまでの数 たし算・ひき算の意味、1 けたどうしのたし算とその逆のひき算(繰り上がり・繰り下がりを含む) 時刻を読む
2 年 1000 までの数、10000 までの数 2 けたのたし算・ひき算の筆算、簡単な 3 けたの筆算 1 日 = 24 時間、1 時間 = 60 分
3 年 万の単位、10 倍・100 倍・1000 倍、110\displaystyle \frac{1}{10} 3 けた・4 けたのたし算・ひき算の筆算 秒、時刻や時間を求める
4 年 億・兆の単位、十進位取り記数法のまとめ ― ―

現行の学習指導要領(2017 年告示、2020 年度から実施)にもとづく目安です。実際に扱う時期は、教科書によって少し前後します。二進法とローマ数字は小学校の算数では扱いません(二進法は高校の「情報 I」、いろいろな記数法は高校の数学 A で学びます)。

1.1 数えるということ

1 対 1 対応 ―数えなくても比べられる

食卓にコップを並べ、それぞれにふたをのせていくと、コップが 1 つ余りました。このとき、コップやふたがいくつあるかを知らなくても、「コップのほうが多い」ことはわかります。

コップ 6 こと、ふた 5 まいを 1 つずつ線で結んだ図。コップが 1 こ余るので、数えなくてもコップのほうが多いとわかる

定義 1.1(1 対 1 対応)2 つの集まりのものを、1 つずつ、余りも重なりもなく組にできるとき、2 つの集まりは 1 対 1 に対応するといいます。1 対 1 に対応する 2 つの集まりには、同じ数だけのものがあります。

1 対 1 対応は、数を知る前から使える、もっとも基本的な「比べ方」です。羊飼いが朝、放牧に出す羊 1 匹ごとに小石を 1 つ袋に入れ、夕方に戻った羊 1 匹ごとに小石を 1 つ取り出せば、数詞を知らなくても羊がそろったかどうかがわかります。いすとりゲームでも、人といすを 1 対 1 に組にして、余った人が負けになります。

では「数える」とは何でしょうか。「いち、に、さん、…」という決まった順の数詞を 1 つずつ唱えながら、ものを 1 つずつ指していくと、ものと数詞の始めの部分とが 1 対 1 に対応します。最後に唱えた数詞が、ものの個数です。つまり数えるとは、ものの集まりを数詞の列の始めの部分と 1 対 1 に対応させることです。

発達心理学者のゲルマン (R. Gelman) とガリステル (C. R. Gallistel) は、1978 年の著書で、正しく数えるために子どもが身につける原理を次の 5 つに整理しました。

  1. 1 対 1 の原理:1 つのものに、数詞を 1 つだけ対応させる(数え飛ばしも、2 度数えもしない)。
  2. 安定順序の原理:数詞はいつも同じ順に唱える。
  3. 基数の原理:最後に唱えた数詞が、全体の個数を表す。
  4. 抽象の原理:みかんでも、音でも、ジャンプの回数でも、どんなものの集まりでも同じように数えられる。
  5. 順序無関係の原理:どの順に数えても、個数は同じになる。

大人には当たり前のことばかりですが、幼い子どもはこれを一つずつ身につけていきます。たとえば、数詞を「いち、に、さん、し、ご」と言いながら指が 4 つしか動いていなかったり(1 対 1 の原理が崩れている)、数え終わったあとに「いくつ?」と聞かれてもう一度数え始めたり(基数の原理がまだ)するのは、よく見られることです。

集合数と順序数

「3」という数は、2 つの違う意味で使われます。

定義 1.2(集合数・順序数)「みかんが 3 こ」のように、集まりの大きさ(いくつあるか)を表す数を集合数といいます。「前から 3 番目」のように、並んだものの中での位置(何番目か)を表す数を順序数といいます。

7 台並んだ車の図。上は「前から 3 番目」で 3 台目の 1 台だけ、下は「前から 3 台」で先頭から 3 台すべて

「前から 3 番目」は 1 台だけを指し、「前から 3 台」は 3 台全部を指します。この 2 つをつなぐのが数えることです。前から順に数えていって、3 番目のものを指して「さん」と言ったとき、それまでに数えたものはちょうど 3 こになっています。順序数の「3 番目」が、そこまでの集合数「3 こ」を表しているのです。基数の原理は、この「最後の順序数がそのまま集合数になる」ことを言っています。

例 1.3 数には、集合数でも順序数でもない使い方もあります。電話番号、背番号、バスの系統番号などは、ものを区別するための名前として数字を使っているだけで、「背番号 10 の選手は背番号 5 の選手の 2 倍」といった計算には意味がありません。

注意

つまずきポイント 「いち、に、さん、…」と 100 まで唱えられることと、数がわかっていることは別です。数唱は歌のように覚えられますが、集合数の意味(最後に言った数が全部の個数になること)がわかっていないと、「あめは何こ?」と聞かれて数え終わったあと、最後の 1 こを指して「これが 5」と答えたり、もう一度数え直したりします。また、並べ方を変える(間を広げる)と「こっちのほうが多い」と答える子もいます。数の大きさが、並べた長さではなく 1 対 1 対応で決まることを、まだ実感できていないのです。

ヒント

子どもに伝えるには おはじきやブロックを数えるときは、数えたものを 1 つずつ横へ動かしながら数えるようにします。数えたものと数えていないものが分かれるので、数え飛ばしや 2 度数えが防げます(1 対 1 の原理)。数え終わったら「全部でいくつ?」と聞き、子どもが最後の数をもう一度言えたら「そう、最後に言った数が全部の数だね」と確認します(基数の原理)。続けて、おはじきの並べ方を変えて「今度はいくつ?」と聞いてみましょう。数え直さずに「同じ」と答えられたら、数が並べ方によらないこと(心理学では数の保存と呼ばれます)がわかってきています。

補足

この先の数学では 1 対 1 対応は、大学の数学では全単射と呼ばれ、「2 つの集合の要素の個数が等しい」ことの定義そのものになります。この定義は、無限にある集まりにも使えます。たとえば、1,2,3,…1, 2, 3, \dots と 2,4,6,…2, 4, 6, \dots は「11 と 22、22 と 44、33 と 66、…」と 1 対 1 に対応するので、1 以上の整数と、2 以上の偶数とは「同じ個数」あることになります。一方、実数は整数と 1 対 1 に対応しないほど多いことが証明されます(00 第5章)。また、「1 から始めて、次の数、次の数、…と進む」という数詞の列のしくみを取り出したのが、自然数を定めるペアノの公理です(00 第7章)。

1.2 0 の意味と役割

0 は、ほかの数より遅れて生まれた数です。ものを数えるとき、「1 こもない」ことをわざわざ数で表す必要はあまりなかったからです。算数で使う 0 には、次の 3 つの役割があります。

  1. 何もないことを表す数:玉入れで 1 こも入らなかったら、得点は 0 点です。集合数としての 0 で、小学 1 年の教科書にも、玉入れのような場面で 0 を導入するものがあります。
  2. 空いている位を示す記号:205 の 0 は「十の位には何もない」ことを示しています。0 を書かないと 25 になってしまいます。
  3. 基準を表す数:ものさしの目盛りは 0 から始まり、数直線にも出発点として 0 があります。ここでの 0 は「何もない」というより、長さや位置を測り始める基準の点です(中学校で学ぶ負の数は、この基準より手前の数として考えます)。

性質 1.4(0 のたし算・ひき算)どんな数に 0 を足しても、どんな数から 0 をひいても、数は変わりません。また、ある数からその数自身をひくと 0 になります。たとえば 7+0=77 + 0 = 7、0+7=70 + 7 = 7、7−0=77 - 0 = 7、7−7=07 - 7 = 0 です。

「何もないものを足しても、増えない」と言えばそれまでですが、子どもにとって「7+07 + 0 は計算なのか」は自然な疑問です。玉入れの 2 回の得点を合わせる場面(1 回目 7 点、2 回目 0 点)を考えると、7+07 + 0 もほかのたし算と同じ式で表せることが納得できます。0 を特別扱いせずに同じ式で書けるようにしたところが、0 を数として認めることの意味です。

歴史的には、2 の「空いた位の記号」が先に現れました。古代バビロニアでは、六十進法の位取りで空いた位を示す記号が使われるようになりましたが、それを数として計算に使うことはなかったと考えられています。0 を数として扱い、0 を足す・ひくといった計算の規則を書き残したのは、7 世紀インドの数学者ブラーマグプタ (Brahmagupta) の天文学書(628 年)がよく知られた例です。インドで生まれた 0 を含む 10 個の数字による位取り記数法はアラビア世界を経てヨーロッパに伝わり、1202 年にイタリアのフィボナッチ (Fibonacci) が『算盤の書』で紹介したことが、普及のきっかけの一つになりました。いま使っている 0〜9 の数字を「アラビア数字」(日本では「算用数字」)と呼ぶのは、この伝わり方によるものです。

注意 1.5 0 のかけ算と、「0 でわってはいけない」理由は、かけ算・わり算の意味とあわせて第2章「かけ算とわり算の意味」で扱います。

1.3 十進位取り記数法

10 ずつまとめる

ストローが 243 本あるとします。1 本ずつ数えると時間がかかるうえ、途中でわからなくなりがちです。そこで 10 本ずつ輪ゴムで束ね、さらにその束が 10 こできたら、それを 1 つの大きな束(100 本)にまとめます。すると「大きな束が 2 つ、小さな束が 4 つ、ばらが 3 本」となり、ひと目で数がわかります。

243 を、100 のまとまり 2 つ、10 のまとまり 4 つ、ばら 3 つで表し、位取りの表に 2、4、3 と書いた図

この「大きな束・小さな束・ばら」の個数を、決まった順に左から並べて書いたのが 243 です。

定義 1.6(十進位取り記数法)10 こ集まるごとにまとめて 1 つ上の単位をつくり、それぞれの単位がいくつあるかを、単位の大きい順に左から並べて書き表す方法を十進位取り記数法といいます。数字を書く場所を位といい、右から順に一の位、十の位、百の位、千の位、…と呼びます。たとえば

243=2×100+4×10+3243 = 2 \times 100 + 4 \times 10 + 3

です。

名前の「十進」は「10 集まると次の位へ進む」こと、「位取り」は「数字の置かれた位置で、その数字が表す大きさが決まる」ことを表しています。243 の 2 と 32 の 2 は、同じ数字でも表す大きさが 200 と 2 で違います。

このしくみのおかげで、0 から 9 までの 10 個の数字だけで、どんなに大きな整数でも書けます。ばらが 10 こたまったら束にするので、どの位の数字も 0〜9 のどれかで済むからです。そして、どこかの位に 1 つもないときに、その位を空けておくための記号が 0 です。

性質 1.7(表し方はただ 1 通り)0 以上の整数は、十進位取り記数法でただ 1 通りに表せます(いちばん左の数字が 0 にならないように書くとき。0 自身は「0」と書きます)。

ストローの束ね方で考えると、「ばらが 10 本以上残っていたら束にする」ことをくり返す限り、束の作り方に迷う余地はなく、最後に残るばらはいつも 0〜9 本です。だから表し方は 1 通りに決まります。

大人のための証明. 書き表せることと、書き表し方が 1 通りであることを示します。

0 より大きい整数 nn を 10 でわった商を qq、あまりを rr とすると、n=q×10+rn = q \times 10 + r で、rr は 0〜9 のどれかです。この rr を一の位の数字とし、qq についても同じことをくり返して十の位の数字を決め、……と続けます。商はどんどん小さくなるので、いつか 0 になって止まります。こうして十進位取り記数法で書き表せます。

逆に、nn がある書き方で ⋯+c×100+b×10+a\cdots + c \times 100 + b \times 10 + a(a,b,c,…a, b, c, \dots は 0〜9 の数字)と表されているとします。一の位以外の部分はすべて 10 の倍数なので、nn を 10 でわったあまりは aa です。つまり一の位の数字 aa は nn だけから決まります。次に n−an - a を 10 でわると ⋯+c×10+b\cdots + c \times 10 + b になるので、同じ理由で十の位の数字 bb も nn だけから決まります。これをくり返すと、すべての位の数字が nn だけから決まるので、表し方は 1 通りです。□\square

書き方(記数法)と読み方(命数法)

243 を漢数字で書くと「二百四十三」です。漢数字は「百」「十」という位の名前を書くので、空いた位は書かなくて済みます(二百五)。一方、算用数字は位置で位を表すので、空いた位に 0 が必要です(205)。数の書き表し方を記数法、数の呼び方(読み方)を命数法といいます。漢数字は命数法をそのまま文字にしたもので、位取り記数法ではありません。

日本語の数詞はとても規則的です。11 は「十一(10 と 1)」、20 は「二十(10 が 2 つ)」、47 は「四十七(10 が 4 つと 7)」と、読み方がそのまま 10 のまとまりの個数を表しています。英語では 11 と 12 が eleven、twelve という独立した語で、13〜19 は thirteen(3 と 10)のように一の位を先に言い、フランス語では 80 を quatre-vingts(4 つの 20)と言います。日本語は位取りの構造を読み方から感じとりやすい言語だといえます。

注意

つまずきポイント 「二百五」を 2005 と書いてしまうのは、ごくよくある誤りです。「にひゃく」を聞いて 200 と書き、続いて「ご」を聞いて 5 を書き足すため、200 と 5 が並んでしまうのです。命数法(読み方)の「二百」は「百が 2 つ」という意味ですが、子どもは 200 という 3 けたの数字のかたまりとして覚えていることがあります。「千三十」を 100030 と書く誤りも同じ原因です。読み方を聞いて書くときは、いきなり数字を並べず、位の部屋(下の表)を先にかいて、「百の部屋に 2、十の部屋は何もないから 0、一の部屋に 5」と、位ごとに数字を入れるようにすると防げます。

千の位 百の位 十の位 一の位
2 0 5

ヒント

子どもに伝えるには 位取りのしくみは、まずストローの束や数え棒、10 のブロックのように、10 こ分が実際に 10 倍の大きさに見える道具で体験させます。「ばらが 10 本たまったら、輪ゴムでとめて 1 束にとりかえる」という操作を子ども自身の手でくり返すと、「10 になったらとなりの位に 1 をうつす」の意味が、「10 こを 1 束にとりかえて、束の部屋に置く」こととして納得できます。お金(1 円玉 10 枚と 10 円玉 1 枚の両替)も身近でよい教材ですが、10 円玉は 1 円玉の 10 倍の大きさには見えないので、大きさの感覚がつかめてから使うほうがよいでしょう。

10 倍すると位が 1 つ上がる

位取り記数法では、10 倍・100 倍の計算がとても簡単です(小学 3 年)。

性質 1.8(10 倍と位)整数を 10 倍すると、どの数字も 1 つ上の位に移り、一の位には 0 が入ります。たとえば 37×10=37037 \times 10 = 370 です。100 倍すると 2 つ上の位に移り、末尾に 0 が 2 つつきます。逆に、一の位が 0 の整数を 10 でわると、どの数字も 1 つ下の位に移ります(370÷10=37370 \div 10 = 37)。

37=3×10+737 = 3 \times 10 + 7 なので、10 倍すると「10 が 3 こ」が「100 が 3 こ」に、「1 が 7 こ」が「10 が 7 こ」になります。つまり 37×10=3×100+7×10=37037 \times 10 = 3 \times 100 + 7 \times 10 = 370 で、数字が 1 つずつ上の位へずれるのです。「0 をつける」のは結果の見え方で、起きていることは数字の位のずれです。この見方は、第4章で小数の 10 倍・110\displaystyle \frac{1}{10} を考えるときにもそのまま使えます(第4章 性質 4.2)。

1.4 大きな数 ―万・億・兆

千の次の位は「一万」です。そこから先は、十万、百万、千万と「十・百・千」をくり返し、その次が「一億」、さらに十億、百億、千億、そして「一兆」と続きます。日本の命数法では、4 けたごとに新しい名前(万・億・兆・京・…)がつき、その間は「一・十・百・千」のくり返しです。

性質 1.9(4 けたごとの区切り)1 万は 1000 の 10 倍で、0 が 4 こつく数(10000)です。1 億は 1 万の 1 万倍で 0 が 8 こ、1 兆は 1 億の 1 万倍で 0 が 12 こつきます。そのため大きな数は、一の位から左へ 4 けたずつ区切ると、区切りごとに「万」「億」「兆」をつけて読めます。

16 けたの位取り表に 320507000 を書いた図。日本の読み方では 4 けたごとに区切って 3 億 2050 万 7000、コンマは 3 けたごとで 320,507,000

例 1.10 地球から太陽までの平均の距離は約 150000000 km です。右から 4 けたずつ区切ると 1|5000|0000 なので、「1 億 5000 万 km」と読みます。光は 1 秒間に約 30 万 km 進むので、太陽の光が地球に届くまでには、150000000÷300000=500150000000 \div 300000 = 500 で約 500 秒(8 分あまり)かかります。

万・億・兆の上には、京(けい)、垓(がい)と続く名前があり、江戸時代の算術書『塵劫記』(吉田光由、1627 年)などを通じて広まりました。いまよく使われる表では、最後の「無量大数」は 1 のあとに 0 が 68 こ続く数です。

注意 1.11 数を書くときのコンマ(320,507,000)は、3 けたごとに打つのが国際的な習慣です。英語では thousand(千)、million(百万)、billion(十億)と 3 けたごとに新しい名前がつくので、コンマがそのまま読み方の区切りになります。日本語の読み方は 4 けたごとなので、コンマの位置と読み方の区切りがずれます。読むときは、コンマを無視して右から 4 けたずつ数え直すのが確実です。

1.5 たし算・ひき算の意味

3+2=53 + 2 = 5 という同じ式が、いろいろな場面で使われます。算数では、たし算とひき算が使われる代表的な場面を、次のように区別します。

定義 1.12(たし算の場面)

  • 合併:2 つの集まりを同時にあわせると、いくつになるか。(例:赤い花が 3 本、白い花が 2 本。あわせて何本?)
  • 増加:はじめにある数に、あとからいくつか加わると、いくつになるか。(例:鳥が 3 羽いて、2 羽飛んできた。何羽になった?)

定義 1.13(ひき算の場面)

  • 求残:はじめにある数から、いくつかを取り去ると、いくつ残るか。(例:あめが 5 こあって、2 こ食べた。残りは何こ?)
  • 求差:2 つの数の違いはいくつか。(例:犬が 5 匹、猫が 3 匹。どちらが何匹多い?)

たし算・ひき算の 4 つの場面。合併は 3 こと 2 こをあわせて 5 こ、増加は 3 こに 2 こ増えて 5 こ、求残は 5 こから 2 こ減って 3 こ、求差は 5 こと 3 こを 1 対 1 に結んだ残りの 2 こが違い

合併と増加は、どちらも「あわせた数」を求めますが、場面の見え方が違います。合併では 2 つの集まりは対等で、どちらを先に書いても同じなので、3+2=2+33 + 2 = 2 + 3(交換法則)が自然に感じられます。増加では「はじめ」と「あとから」に時間の順序があり、式も「はじめの数 + 増えた数」と書くのが自然です。それでも答えが同じになることが、たし算の交換法則の具体的な意味です。

ひき算の求残は「取り去る」動作があって、子どもにもわかりやすい場面です。難しいのは求差です。犬と猫の数を比べる場面では、何も取り去っていないし、何も減っていません。それなのに、なぜひき算なのでしょうか。

ここで 1.1 節の 1 対 1 対応が役に立ちます。犬 1 匹と猫 1 匹を組にしていくと、組になれなかった犬が 2 匹残ります。この「組になった分を取り除いた残り」が違いです。猫の数と同じ 3 匹分を犬から取り除くと考えれば、求差は求残に帰着し、5−3=25 - 3 = 2 と表せます。

教科書には、ほかにも次のような場面が出てきます。

  • 求補:全体と一部分がわかっていて、残りの部分を求める(例:子どもが 8 人いて、そのうち 3 人が男の子。女の子は何人? ―8−3=58 - 3 = 5)。
  • 順序数を含む場面:「前から 5 番目の人の、3 人後ろは前から何番目?」(5+3=85 + 3 = 8 で 8 番目)。順序数と集合数が混じるので、図をかかないと間違えやすい場面です。

また、ひき算はたし算の逆でもあります。5−25 - 2 は「2 にいくつ足すと 5 になるか」の答えです。このことは、ひき算の答えをたし算で確かめる確かめ算(3+2=53 + 2 = 5 だから 5−2=35 - 2 = 3 は正しい)の根拠になります。

注意

つまずきポイント 文章題で「あわせて」「ふえると」ならたし算、「のこりは」「ちがいは」ならひき算、とことばだけで式を決める習慣は、すぐに破たんします。「赤い花は 8 本で、白い花より 3 本多いです。白い花は何本ですか」という問題では、「多い」につられて 8+3=118 + 3 = 11 としてしまう子が少なくありません。正しくは、赤い花が白い花より多いのだから白い花は赤い花より少なく、8−3=58 - 3 = 5 本です。このような問題では、赤と白の 2 本のテープをかいて、長さの関係を図で確かめることが大切です。場面を絵や図に表してから式を立てる習慣が、高学年の割合の問題まで生きてきます。

ヒント

子どもに伝えるには 式からお話を作る「お話づくり」がおすすめです。「5−25 - 2 になるお話を作ってみて」と頼むと、多くの子は「5 こあって 2 こ食べた」という求残のお話を作ります。そこで「じゃあ、何も食べたりなくしたりしないで、5−25 - 2 になるお話は作れる?」と聞いてみてください。「お兄ちゃんはあめを 5 こ、ぼくは 2 こ持っています。どっちが何こ多い?」のような求差のお話が出てきたら、ひき算の意味が広がった証拠です。おはじきを 2 列に並べて 1 こずつ線で結ぶと、違いが目に見えます。

1.6 繰り上がり・繰り下がりと筆算のしくみ

10 をつくる、10 からとる

小学 1 年では、繰り上がりのあるたし算(8+58 + 5 など)の前に、「11 と 99、22 と 88、…で 10」という10 の合成・分解をしっかり練習します。これが、繰り上がり・繰り下がりのすべての土台になるからです。十進位取り記数法では「10 のまとまり」を作ることが位を上げることなので、1 けたのたし算でも、10 のまとまりを作って考えるのがいちばん自然です。

さくらんぼ計算(たし算)

8+58 + 5 を考えます。8 はあと 2 で 10 になるので、5 を 2 と 3 に分け、8 と 2 で 10 を作ります。10 と 3 で 13 です。

8 + 5 のさくらんぼ計算。10 のわくの 8 こに、5 こから 2 こを移して 10 を作り、残り 3 こで 13。5 を 2 と 3 に分けて 8 + 2 = 10、10 + 3 = 13

分けた数を、さくらんぼのように 2 本の線でつないで書くので、この書き方はさくらんぼ計算と呼ばれています。図の左は、10 こ入るわく(10 のわく、ten frame)を 2 つ使った表し方で、8 この入ったわくの空き 2 マスに、もう一方の 5 こから 2 こを移すと、わくがちょうど満杯になります。

足す数を分ける方法を加数分解、足される数を分ける方法を被加数分解といいます。8+58 + 5 を被加数分解すると、8 を 3 と 5 に分けて 5+5=105 + 5 = 10、10+3=1310 + 3 = 13 です。9+49 + 4 のように足される数が 10 に近ければ加数分解、3+93 + 9 のように足す数が 10 に近ければ被加数分解が楽です。

性質 1.14(10 のまとまりを作る)繰り上がりのあるたし算は、どちらかの数を分けて 10 のまとまりを作り、「10 といくつ」にすると計算できます。

8+5=8+(2+3)=(8+2)+3=10+3=138 + 5 = 8 + (2 + 3) = (8 + 2) + 3 = 10 + 3 = 13

式で見ると、さくらんぼ計算はたし算の結合法則(3 つの数を足すとき、前の 2 つを先に足しても後ろの 2 つを先に足しても答えは同じ)を使っています。計算のきまりは第3章「計算のきまりと整数の性質」で扱います。

さくらんぼ計算(ひき算)

13−813 - 8 を考えます。一の位の 3 からは 8 がひけません。そこで 13 を 10 と 3 に分け、10 から 8 をひいて 2、それと残しておいた 3 をあわせて 5 です。

13 − 8 のさくらんぼ計算(減加法)。13 を 10 と 3 に分け、10 のわくから 8 こをとると 2 こ、残りの 3 ことあわせて 5

この方法を減加法(ひいてから足す)といいます。もう一つ、ひく数のほうを分ける減減法(ひいてからまたひく)もあります。13−813 - 8 なら 8 を 3 と 5 に分け、13−3=1013 - 3 = 10、10−5=510 - 5 = 5 です。12−312 - 3 のようにひく数が小さいときは、減減法(12−2=1012 - 2 = 10、10−1=910 - 1 = 9)が楽です。

減加法:13−8=(10−8)+3=2+3=5減減法:13−8=(13−3)−5=10−5=5\begin{aligned} \text{減加法:}\quad 13 - 8 &= (10 - 8) + 3 = 2 + 3 = 5 \\ \text{減減法:}\quad 13 - 8 &= (13 - 3) - 5 = 10 - 5 = 5 \end{aligned}

減加法の大事な点は、「10 から 8 をひく」が、1 年生がすでに覚えた 10 の分解(8 と 2 で 10)だけでできることです。筆算の繰り下がり(10 を借りてきて、そこからひく)は減加法と同じ考え方なので、多くの教科書が減加法を中心に扱っています。

ヒント

子どもに伝えるには さくらんぼの書き方そのものより、頭の中で 10 を作ることが目標です。卵の 10 こ入りパックや、手作りの 10 のわく(厚紙に 5 × 2 のマス)とおはじきを使い、「8 こ入っているね。あといくつで満杯?」と聞く遊びを、たし算より先にたくさんしておきます。「8 と 2」「7 と 3」がすぐに出てくるようになると、8+58 + 5 は「8 はあと 2 で 10、5 から 2 をもらって、残りは 3。だから 13」と自然に考えられるようになります。慣れてきたら、さくらんぼを書かずに言葉だけで説明させてみましょう。

筆算のしくみ

2 けた・3 けたのたし算の筆算も、位ごとに「10 のまとまり」を作っていく点は同じです。347+285347 + 285 を例にします。

    ¹ ¹         ← 繰り上がり
    3 4 7
  + 2 8 5
  -------
    6 3 2

一の位は 7+5=127 + 5 = 12 で、ばらが 12 こ。10 こを 1 束にとりかえて十の位へ送り(繰り上がり)、一の位には 2 を書きます。十の位は 4+8+1=134 + 8 + 1 = 13 で、10 の束が 13 こ。そのうち 10 束を 100 の束 1 つにとりかえて百の位へ送り、十の位には 3 を書きます。百の位は 3+2+1=63 + 2 + 1 = 6 です。式で書けば次のとおりです。

347+285=(300+200)+(40+80)+(7+5)=500+120+12=632\begin{aligned} 347 + 285 &= (300 + 200) + (40 + 80) + (7 + 5) \\ &= 500 + 120 + 12 = 632 \end{aligned}

性質 1.15(筆算の考え方)たし算・ひき算の筆算は、次の 2 つのことにもとづいています。

  1. 数を位ごとに分け、同じ位どうしで計算してよい(たし算では交換法則・結合法則による。ひき算でも、位ごとにひいた結果を合わせればよい)。
  2. ある位の 10 こと、1 つ上の位の 1 こは同じ大きさなので、いつでもとりかえてよい。たし算では 10 こたまったら 1 つ上の位の 1 こにとりかえ(繰り上がり)、ひき算でひけないときは 1 つ上の位の 1 こを 10 こにくずす(繰り下がり)。

筆算を右の位から計算するのは、繰り上がりが右から左へしか伝わらないからです。左から計算すると、あとで右の位から繰り上がりが来たときに、書いた数字を直さなければなりません。

ひき算の繰り下がりで難しいのは、403−167403 - 167 のように、くずしたい位が 0 の場合です。一の位の 3 から 7 はひけませんが、十の位は 0 なので、そこからは借りられません。そこで、まず百の位の 1 つ(100)を十の位の 10 こにくずし、そのうち 1 つ(10)をさらに一の位の 10 こにくずします。

403 − 167 の繰り下がり。403 を 3 百 10 十 3、さらに 3 百 9 十 13 とくずしてから位ごとにひくと 2 百 3 十 6 で 236

くずしたあとの「3 百 9 十 13」は 300+90+13=403300 + 90 + 13 = 403 で、もとの数と大きさは変わっていません。この形にしてしまえば、どの位もひける形になり、13−7=613 - 7 = 6、9−6=39 - 6 = 3、3−1=23 - 1 = 2 で答えは 236 です(確かめ算:236+167=403236 + 167 = 403)。

注意

つまずきポイント 筆算のひき算でとても多いのが、403−167=364403 - 167 = 364 のように、各位で大きいほうから小さいほうをひいてしまう誤りです。一の位で「3 から 7 はひけないから 7 から 3 をひいて 4」、十の位で「0 から 6 はひけないから 6 から 0 をひいて 6」としてしまうのです。原因は、筆算を「上下の数字の組を 1 つずつ処理する手順」として覚え、各位の数字が 403 という 1 つの数の一部であることが見えなくなっていることにあります。確かめ算(364+167=531364 + 167 = 531 で 403 にならない)や、答えの見当(400 から 170 くらいをひくのだから 230 くらい)で気づかせ、上の図のように「くずしても大きさは同じ」ことを、位の表やお金で確かめ直すのが効果的です。

1.7 ほかの記数法

10 ずつまとめるのは、人間の指が 10 本あるからだと考えられています。まとめる数を変えると、別の記数法ができます。

二進法

2 こ集まるごとに 1 つ上の位にまとめると、使う数字は 0 と 1 の 2 つだけで済みます。

定義 1.16(二進法)2 こ集まるごとにまとめて 1 つ上の単位をつくり、各単位がいくつあるか(0 か 1)を、大きい順に左から並べて書く方法を二進法といいます。位は右から順に、1、2、4、8、16、32、…の位で、どの位も右どなりの 2 倍です。

二進法のカード。16、8、4、2、1 の点のカードのうち、8、4、1 を表にすると 8 + 4 + 1 = 13。表を 1、うらを 0 として 01101、つまり 1101

たとえば 13 は 8+4+18 + 4 + 1 なので、16 の位が 0、8 の位が 1、4 の位が 1、2 の位が 0、1 の位が 1 で、二進法では 1101 と書きます。十進法の数と並べると、次のようになります。

十進法 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
二進法 1 10 11 100 101 110 111 1000 1001 1010

二進法の「10」は「じゅう」ではなく「2 が 1 こ、1 が 0 こ」、つまり 2 です。どの位も 1 になったら(111 = 7 など)、次は繰り上がりが続いて 1000 になります。これは十進法で 999 の次が 1000 になるのと同じしくみです。

例 1.17 二進法の 1011 は、8 の位・2 の位・1 の位が 1 なので 8+2+1=118 + 2 + 1 = 11 です。逆に 20 を二進法で書くには、20 をこえない最大の位 16 をとって残り 4、4 の位をとって残り 0 なので、16 の位と 4 の位が 1 で 10100 です。

コンピュータの中では、電気が流れる・流れない、のような 2 つの状態で情報を表すので、数は二進法で扱われます。二進法の 1 けたをビット (bit) と呼びます。

時計と六十進法

時間の単位は、60 秒で 1 分、60 分で 1 時間と、60 ずつまとめて次の単位に進みます。これは、紀元前 2000 年ごろの古代バビロニアで使われていた六十進法の名残りと考えられています。角度の 1 周 360 度や、1 度 = 60 分(角度の「分」)にも同じ名残りがあります。60 は 2、3、4、5、6、10、12、15、20、30 でわり切れるので、半分・3 分の 1・4 分の 1 などを整数で表しやすいという利点があります。

ただし、時計は完全な六十進法ではありません。秒と分、分と時間の間は 60 ですが、時間と日の間は 24 です。時間の計算では、どの単位の間がいくつで繰り上がるかに気をつけます。

例 1.18 1 時間 40 分と 50 分をあわせると、40+50=9040 + 50 = 90 分です。60 分を 1 時間にとりかえて(繰り上がり)、2 時間 30 分になります。逆に、2 時間 10 分から 50 分をひくには、1 時間を 60 分にくずして 1 時間 70 分とし(繰り下がり)、70−50=2070 - 50 = 20 で 1 時間 20 分です。

注意 1.19 「1.5 時間」は 1 時間 50 分ではなく、1 時間 30 分です。0.50.5 は 1 時間の半分を表すからです。小数(十進法)と時間の単位(六十進法)が混じると、大人でも間違えやすくなります。たとえば電卓に「1.40」と打ちこんでも、それは 1 時間 40 分ではなく 1.4 時間(1 時間 24 分)を表す数です。時間と分を小数点の左右に並べて電卓で計算すると、正しい答えにならないので注意しましょう(問題 1.8)。

ローマ数字

ローマ数字は、時計の文字盤や本の章番号などで、いまも目にすることがあります。

記号 I V X L C D M
大きさ 1 5 10 50 100 500 1000

ローマ数字では、記号の表す大きさを足して数を表します(III = 3、XVI = 16、MM = 2000)。ただし、小さい記号が大きい記号の左にあるときはひきます(IV = 4、IX = 9、XL = 40、XC = 90、CD = 400、CM = 900)。たとえば 2026 は MMXXVI、1999 は MCMXCIX(M + CM + XC + IX)です。時計の文字盤では、4 を IV ではなく IIII と書いたものもよく見かけます。

算用数字 漢数字 ローマ数字
205 二百五 CCV
1999 千九百九十九 MCMXCIX
2026 二千二十六 MMXXVI

ローマ数字には 0 がなく、位取りもありません(V はどこに書いても 5 を表し、置く場所によって 50 や 500 を表すことはありません)。そのため、位をそろえて縦に並べる筆算ができません。古代ローマや中世ヨーロッパでは、計算は線を引いた板の上に小石や玉を置く計算盤(そろばんの仲間)で行い、ローマ数字は結果を記録するために使われました。計算盤の上では、線の位置が位を表していたので、実は位取りの考え方で計算していたことになります。0 を含む位取り記数法が広まると、紙の上で筆算ができるようになり、計算盤はしだいに使われなくなっていきました。

性質 1.20(位取り記数法のよさ)0 を含む位取り記数法には、次のよさがあります。

  1. 決まった少数の数字(十進法なら 10 こ)だけで、どんなに大きな整数でも書ける。
  2. 位ごとに計算し、繰り上がり・繰り下がりでつなぐ筆算ができる。
  3. 大小が比べやすい(けた数が多いほうが大きく、けた数が同じなら上の位から比べる)。

補足

この先の数学では 10 や 2 のかわりに、2 以上のどんな整数 nn でまとめても位取り記数法が作れ、これを nn 進法といいます。性質 1.7 の「大人のための証明」は、10 を nn に変えてもそのまま成り立ち、どの整数も nn 進法でただ 1 通りに表せます。nn 進法は高校の数学 A で学びます(P6 第3章「整数の性質」)。二進法での表し方がただ 1 通りであることを集合のことばで示す演習が、00 第1章 にあります。また、ペアノの公理(00 第7章)から出発して整数を作るときには、0 や 1 や「次の数」から数を組み立てるだけで、どの記数法を使うかは関係ありません。記数法は数そのものではなく、数の名前のつけ方なのです。

まとめ

  • 1 対 1 対応を使うと、数を知らなくても 2 つの集まりの多い・少ないが比べられます。数えるとは、ものの集まりを数詞の列の始めの部分と 1 対 1 に対応させることです。
  • 「いくつあるか」を表す集合数と、「何番目か」を表す順序数があります。数えたときに最後に言った順序数が、全体の集合数になります。
  • 0 には、何もないことを表す数、空いた位を示す記号、基準(ものさしの始まり)という 3 つの役割があります。
  • 十進位取り記数法は、10 こ集まるごとにまとめて次の位に進み、数字を書く位置で大きさを表します。0〜9 の 10 こだけでどんな整数も書け、その書き方はただ 1 通りです。
  • 日本の読み方は 4 けたごとに万・億・兆と名前が変わり、コンマは 3 けたごとに打ちます。大きな数は右から 4 けたずつ区切って読みます。
  • たし算には合併・増加、ひき算には求残・求差などの場面があります。求差は、1 対 1 に組にして余った分を求めることで、求残と同じひき算になります。
  • さくらんぼ計算は、10 のまとまりを作って「10 といくつ」にする方法です。筆算の繰り上がり・繰り下がりも、「ある位の 10 こと、1 つ上の位の 1 こは同じ」というとりかえにもとづいています。
  • 二進法・時計の六十進法・ローマ数字と比べると、0 を含む位取り記数法は、少ない数字で何でも書け、筆算ができ、大小も比べやすいという点ですぐれています。

演習問題

問題 1.1 ★ 次の (ア)〜(カ) の「4」は、集合数・順序数・名前としての数のどれにあたりますか。 (ア) 前から 4 番目の席 (イ) いすが 4 きゃく (ウ) 4 月 (エ) マンションの 4 階に住んでいる (オ) えんぴつ 4 本 (カ) 背番号 4 の選手

解答

(ア) 順序数 (イ) 集合数 (ウ) 順序数(1 年の 4 番目の月) (エ) 順序数(下から 4 番目の階) (オ) 集合数 (カ) 名前としての数

(カ) の背番号は、選手を区別するための名前で、「4 番目」や「4 こ」という意味はありません(チームによっては、ポジションや入団の順と関係があることもありますが、数としての計算には使いません)。なお、(ウ) の「4 月」は、「1 月から数えて 4 か月目」という順序数です。「4 か月」なら期間の長さを表す集合数になります。

問題 1.2 ★ 【説明】 子どもが「二百五」を 2005 と書き、「千三十」を 100030 と書きました。正しくはどう書くかを答え、どう考えて間違えたのか、どう説明すればよいかを書いてください。

解答

正しくは 205 と 1030 です。

聞こえた順に「にひゃく → 200」「ご → 5」と、知っている数字のかたまりを書き並べたと考えられます。「千三十」も「1000」と「30」を並べて 100030 になっています。

説明の例:「『二百五』は、100 のまとまりが 2 つと、ばらが 5 こ、っていう意味だよ。位の部屋をかいてみよう。百の部屋に 2、十の部屋には何もないから 0、一の部屋に 5。だから 205。2005 だと、千の部屋に 2 が入ってしまうから、二千五になっちゃうね。」実際にストローの束(100 の束 2 つとばら 5 本)を見せ、それを位の表に置かせると、200 と 5 を並べると位がずれることが目で見てわかります。「千三十」も同様に、千の部屋に 1、百の部屋に 0、十の部屋に 3、一の部屋に 0 で 1030 です。

問題 1.3 ★ (1) 「四十億三百万二十」を数字で書いてください。(2) 72500000 を「〜万」「〜億」を使って読んでください。(3) 1 億は 1 万の何倍ですか。また、1 兆は 100 万の何倍ですか。

解答

(1) 40 億は 4000000000、300 万は 3000000、20 は 20 なので、あわせて 4003000020 です。右から 4 けたずつ区切ると 40|0300|0020 となり、「40 億 300 万 20」と読めることで確かめられます。

(2) 右から 4 けたずつ区切ると 7250|0000 なので、7250 万(七千二百五十万)です。

(3) 1 億は 0 が 8 こ、1 万は 0 が 4 こなので、1 億は 1 万の 1 万倍(10000 倍)です。1 兆は 0 が 12 こ、100 万は 0 が 6 こなので、1 兆は 100 万の 100 万倍(1000000 倍)です。0 の数の差(12−6=612 - 6 = 6)が、何倍かを表す数の 0 の数になっています。

問題 1.4 ★ 次の問題は、合併・増加・求残・求差のどの場面ですか。式と答えも書いてください。 (ア) 公園で 5 人遊んでいました。3 人帰りました。何人残っていますか。 (イ) 金魚が 6 匹、めだかが 9 匹います。どちらが何匹多いですか。 (ウ) 赤いおはじきが 4 こ、青いおはじきが 7 こあります。あわせて何こですか。 (エ) バスに 8 人乗っていました。次のバス停で 5 人乗ってきました。何人になりましたか。

解答

(ア) 求残、5−3=25 - 3 = 2 で 2 人。 (イ) 求差、9−6=39 - 6 = 3 で、めだかが 3 匹多い。 (ウ) 合併、4+7=114 + 7 = 11 で 11 こ。 (エ) 増加、8+5=138 + 5 = 13 で 13 人。

(イ) は何も減っていないのにひき算になる場面です。金魚とめだかを 1 匹ずつ組にすると、組になれないめだかが 3 匹残る、と考えます。(ウ) と (エ) はどちらもたし算ですが、(ウ) は 2 つの集まりが同時にあり、(エ) は時間の順序があります。

問題 1.5 ★★ 【説明】 (1) 7+67 + 6 を、加数分解と被加数分解の 2 通りのさくらんぼ計算で計算してください。(2) 14−914 - 9 を、減加法と減減法の 2 通りで計算してください。(3) (2) の計算を、10 のわく(またはおはじき)を使って子どもに説明する言葉を書いてください。

解答

(1) 加数分解:7 はあと 3 で 10 なので、6 を 3 と 3 に分けて 7+3=107 + 3 = 10、10+3=1310 + 3 = 13。 被加数分解:6 はあと 4 で 10 なので、7 を 3 と 4 に分けて 4+6=104 + 6 = 10、10+3=1310 + 3 = 13。

(2) 減加法:14 を 10 と 4 に分けて 10−9=110 - 9 = 1、1+4=51 + 4 = 5。 減減法:9 を 4 と 5 に分けて 14−4=1014 - 4 = 10、10−5=510 - 5 = 5。

(3) 説明の例(減加法):「14 こは、10 のわくがいっぱいのが 1 つと、ばらが 4 こだね。ばらの 4 こからは 9 こはとれないから、いっぱいのわくのほうから 9 ことろう。10 から 9 とると、わくに 1 こ残るね。残った 1 こと、ばらの 4 こをあわせると、いくつ? そう、5 こ。だから 14−9=514 - 9 = 5 だよ。」

最後に「5+95 + 9 は?」と確かめ算をさせると、たし算とひき算の関係も確認できます。10 から 9 をとって 1 というのは、10 の分解(9 と 1)を覚えていればすぐにわかるので、減加法はひく数が大きい(9、8 など)ときに向いています。

問題 1.6 ★★ 【説明】 子どもが筆算で 403−167=364403 - 167 = 364 と答えました。(1) 正しい答えを求めてください。(2) 子どもがどう考えてこの答えを出したのかを推測してください。(3) 間違いに自分で気づけるような声かけと、正しいやり方の説明を書いてください。

解答

(1) 403 を「3 百 9 十 13」とくずすと、13−7=613 - 7 = 6、9−6=39 - 6 = 3、3−1=23 - 1 = 2 で 236 です(確かめ:236+167=403236 + 167 = 403)。

(2) 一の位で「3 から 7 はひけないので、7 から 3 をひいて 4」、十の位で「0 から 6 はひけないので、6 から 0 をひいて 6」、百の位で 4−1=34 - 1 = 3 としたと考えられます。各位で「大きいほうから小さいほうをひく」というやり方で、上下を入れかえてしまう誤りです。

(3) 声かけの例:「答えが合っているか、たし算で確かめてみよう。364+167364 + 167 はいくつ?」→ 531 になり、403 にならないので間違いに気づけます。また、「400 から 170 くらいをひくと、だいたいいくつになりそう?」と答えの見当を聞くと、230 くらいのはずなのに 364 は大きすぎる、と気づけます。

説明の例:「一の位は 3 から 7 をひきたいけど、ひけないね。上の数と下の数を入れかえちゃいけないよ。403 は『ひかれる数』だから、この 3 は 403 の一部なんだ。となりの十の位から 10 を借りたいけど、十の位は 0 で何もない。だから百の位の 100 を 1 つくずして、10 が 10 こにする。そのうち 1 つをまたくずして、一の位を 13 にするよ。これで 3 百 9 十 13。大きさは 403 のままだね。あとは 13 − 7、9 − 6、3 − 1 で 236。」お金(100 円玉 4 枚と 1 円玉 3 枚から 167 円を払う)で実際に両替させるのも効果的です。

問題 1.7 ★★ 【親子で】 片手の指を、親指から順に 1、2、4、8、16 の位と決め、立てた指を 1、曲げた指を 0 とみなすと、片手で二進法の数が表せます。 (1) 13 を表すには、どの指を立てればよいですか。 (2) 片手で表せる数は、0 からいくつまでですか。両手(10 本の指)ならどうですか。 (3) 二進法の 10110 は、十進法でいくつですか。

解答

(1) 13=8+4+113 = 8 + 4 + 1 なので、親指(1)、中指(4)、薬指(8)を立てます。

(2) 全部の指を立てると 1+2+4+8+16=311 + 2 + 4 + 8 + 16 = 31 なので、0 から 31 まで(32 通り)表せます。両手では位が 1、2、4、…、512 の 10 こになり、全部立てると 1+2+4+8+16+32+64+128+256+512=10231 + 2 + 4 + 8 + 16 + 32 + 64 + 128 + 256 + 512 = 1023 なので、0 から 1023 まで(1024 通り)です。指を 1 本増やすごとに、表せる数の個数は 2 倍になります。

(3) 16 の位、4 の位、2 の位が 1 なので、16+4+2=2216 + 4 + 2 = 22 です。

声かけの例:まず 1 から順に数えてみて、「1 は親指、2 は人さし指だけ、3 は親指と人さし指…」と一緒に指を動かします。4 で「親指と人さし指を曲げて中指を立てる」ところが繰り上がりにあたり、子どもは「全部倒して次を立てる」パターンに自分で気づくことが多いです。気づいたら「十進法でも、9 の次は一の位を 0 にして十の位を 1 にするよね。同じだね」と結びつけます。

問題 1.8 ★★ (1) 2 時間 45 分と 1 時間 35 分をあわせると、何時間何分ですか。(2) 午後 3 時 10 分の 1 時間 40 分前は、何時何分ですか。(3) (1) を電卓で 2.45+1.35=3.82.45 + 1.35 = 3.8 と計算して「3 時間 8 分」と答えた人がいます。どこがおかしいのかを説明してください。

解答

(1) 45+35=8045 + 35 = 80 分で、60 分を 1 時間に繰り上げると 20 分。時間は 2+1+1=42 + 1 + 1 = 4 なので、4 時間 20 分です。

(2) 10 分から 40 分はひけないので、1 時間を 60 分にくずして「2 時 70 分」とみます。70−40=3070 - 40 = 30 分、2−1=12 - 1 = 1 時なので、午後 1 時 30 分です。

(3) おかしな点は 2 つあります。1 つ目は、電卓は十進法で計算するので、分の部分の 45 と 35 を足した 80 を、60 で繰り上げてくれないことです。正しくは 80 分 = 1 時間 20 分と繰り上げなければなりません。2 つ目は、3.83.8 の「8」は小数第一位の数字なので、仮に分の意味で読むとしても 8 分ではなく 80 分にあたることです(3.8=3.803.8 = 3.80)。そもそも電卓の 2.452.45 は「2 時間 45 分」ではなく「2.45 時間」(0.450.45 時間は 27 分なので 2 時間 27 分)を表す数です。分は 60 で次の単位に繰り上がる(六十進法)のに、小数は 10 で繰り上がる(十進法)ので、混ぜて計算すると正しい答えになりません。時間の計算は、時間と分を別の位として、60 で繰り上げる筆算をするのが確実です。

問題 1.9 ★★ 【親子で】 (1) 今年(2026 年)と、自分の生まれた年をローマ数字で書いてください。(2) MCMLXIV はいくつですか。(3) XXVII と XLVIII の和を、ローマ数字のまま考えて求めてみてください。算用数字の筆算と比べて、どこが大変ですか。

解答

(1) 2026 は MM(2000)+ XX(20)+ VI(6)で MMXXVI です。生まれた年が 1985 年なら M + CM + LXXX + V で MCMLXXXV、2018 年なら MMXVIII となります。

(2) M(1000)+ CM(900)+ LX(60)+ IV(4)で 1964 です。

(3) XXVII は 27、XLVIII は 48 で、和は 75 = LXXV です。ローマ数字のまま考えると、たとえば次のようになります。

  • 記号を全部集める:XL、X、X、V、V、I、I、I、I、I
  • I が 5 こで V にとりかえる:XL、X、X、V、V、V
  • V が 2 こで X にとりかえる:XL、X、X、X、V
  • XL(40)に X(10)を 1 こ足すと L(50):L、X、X、V

よって LXXV です。

位がそろっていないので縦に並べられず、「I が 5 こで V」「V が 2 こで X」のように 5 と 2 のとりかえが交互に出てくること、ひき算の形(IV、XL)をいちいち読みかえることが大変です。算用数字なら 27+4827 + 48 は一の位 7+8=157 + 8 = 15、十の位 2+4+1=72 + 4 + 1 = 7 で、すぐに 75 が出ます。

声かけの例:時計の文字盤や映画のエンドロール(制作年がローマ数字で書かれていることがあります)を一緒に探して読んでみると、身近に感じられます。足し算がうまくいかなくても、「だから昔の人は計算盤を使ったんだね」と話すと、位取り記数法のありがたさが伝わります。

問題 1.10 ★★★ 【親子で】 次の手順を、いろいろな 3 けたの数で試してください。 ① 百の位と一の位の数字の差が 2 以上ある 3 けたの数を 1 つ選ぶ(例:732)。 ② その数の百の位と一の位を入れかえた数を作り、大きいほうから小さいほうをひく(732−237=495732 - 237 = 495)。 ③ ②の答えの百の位と一の位を入れかえた数を、②の答えに足す(495+594495 + 594)。 答えはいつも 1089 になります。なぜでしょうか。位取りのしくみを使って説明してください。

解答

選んだ数の百の位を「大」、一の位を「小」(大のほうが大きい数字とします。そうでなければ、入れかえた数のほうから考えます)、十の位を「中」とします。

②の答えは、「大 − 小」に 99 をかけた数です。 選んだ数は「100 が大こ、10 が中こ、1 が小こ」、入れかえた数は「100 が小こ、10 が中こ、1 が大こ」です。ひくと、十の位どうしは打ち消し合い、残りは「100 が(大 − 小)こ」から「1 が(大 − 小)こ」をひいた数、つまり 99 が(大 − 小)こです。例では大 − 小 = 7−2=57 - 2 = 5 なので 99×5=49599 \times 5 = 495 です。

大 − 小は 2〜9 のどれかなので、②の答えは次の 8 通りしかありません。

大 − 小 2 3 4 5 6 7 8 9
②の答え 198 297 396 495 594 693 792 891
③の答え 198+891198 + 891 297+792297 + 792 396+693396 + 693 495+594495 + 594 594+495594 + 495 693+396693 + 396 792+297792 + 297 891+198891 + 198

どれも、十の位が 9 で、百の位と一の位の数字の和が 9 になっています。そのため③では、一の位どうしの和が 9、十の位は 9+9=189 + 9 = 18 で 1 繰り上がり、百の位どうしの和が 9+1=109 + 1 = 10 となって、いつも 1089 になります(表の 8 通りの和はすべて 1089 です)。

大人のための補足. ②の答えがいつも「十の位が 9、外側の和が 9」になるのは、筆算の繰り下がりを追うとわかります。一の位は小 − 大がひけないので 10 を借りて 10+小−大10 + \text{小} - \text{大}、十の位は 1 を貸したので中 − 1 から中はひけず、百の位から借りて 10+中−1−中=910 + \text{中} - 1 - \text{中} = 9、百の位は 大−1−小\text{大} - 1 - \text{小} です。外側の 2 つを足すと (10+小−大)+(大−1−小)=9(10 + \text{小} - \text{大}) + (\text{大} - 1 - \text{小}) = 9 です。差が 1 のときは②の答えが 99 になり、「099」と 3 けたで考えれば 099+990=1089099 + 990 = 1089 が成り立ちますが、99 のまま入れかえると 99 なので、手順に「差が 2 以上」の条件をつけています。

声かけの例:子どもには、まず手品として見せ、「どの数を選んでも 1089 になるよ」と予言してから計算させると盛り上がります。何回か試したら、「②の答えをメモしておいて」と頼み、②の答えが 8 種類しか出てこないこと、どれも真ん中が 9 であることに気づかせると、謎解きの入口になります。

この章を読み終えたら

「読了」にすると学習記録とロードマップに反映されます。演習の自己採点もお忘れなく。

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